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【400字小説】位置

フロアに流れるパトリス・クインの
極めて上品な歌声に酔いしれるオワリは、
今夜を最後に酒で酔わないことを
皆の前で明言。

早速「いくら賭ける?」とか
茶化す声が終演後のライブハウスに飛ぶ。

「太ってるっつっても、オワリは
そんなでもないじゃん!」と矢継ぎ早に。
言い返す隙がないほどに反対の声が飛び交う。
皆、楽しい飲み仲間を失いたくないらしい。
バンドで演奏することはもちろん楽しかったのだが、
オワリ以外ひとり残らず打ち上げの方が楽しみで。

「おれの話を聞け!」と強めに言うと、
ようやく皆が黙ったのでオワリは言い放つ。

「現状に満足してない。もっと上を目指したい」

「それと太ってるのとどう関係あるの!」と
ユニゾンで返答が速攻で。
「太ってたらロックじゃない!」と言い返したけれど、
「カマシ・ワシントンみたいな
衣装で演ればいいんだよ」って声が。
「カマシはジャズじゃん!」とオワリが即答。
でもまた皆、ガヤガヤと飲み出していた。

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