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第五十回 愛と戦争と動物園

こんにちは、なかむらまことです。
昨日の記事の反響がなかなかで驚いています。
「スキ」をつけてくださった方、ありがとうございます。

さて、今日は久しぶりに映画のお話。

1.ワルシャワ動物園においてユダヤ人を匿った実話

本日は『ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命~』という映画を見ました。
公式サイトはこちら
実際にワルシャワ動物園で起きた話をベースとした映画になっています。
まず、私はこのタイトルを見て思いました。
「ユダヤ人を救う…ということは、杉原千畝さんやシンドラーのような感動系かな」
さて、見てからの感想を少しいいますと、
確かに感動系だが、
感動というよりスリルやサスペンスが強い……!!
わりとずっとハラハラしていました。

※以下、映画のネタバレを含みます。

2.女の強さ

原作本は『ユダヤ人を救った動物園 ヤンとアントニーナの物語』なのですが、
あえて映画版では旦那さんであるヤンさんの名前が省かれています。
これは決してヤンさんの功績がない、とかそういうことではないのですが、
物語の軸を置くために奥さんだけにしたのだと思います。
そのため、奥さんを主役に置いたからには、
奥さんメインの物語に仕立てられていました。
これは、奥さんのアントニーナが象の出産を手伝うわりと最初のシーンから見てとれます。
また、動物園を支配下に置いたヘックに諂いながら自分の心を押し隠すアントニーナ。
そこから夫婦がすれ違いますが、再びお互いを確かめ合うことができます。
正直、このくだりいるか?と思いましたが、
原作本にはあったのかもしれませんし、
それだけ仲の良い夫婦だったということだと捉えました。
また、隠れてユダヤ人を匿いつつ、ナチスのヘックをもてなさなくてはいけない、というのは心理的にもかなりしんどい仕事だったと思います。
それを隠し通し、やり遂げたアントニーナはやはり素晴らしい人です。
ここで内助の功を発揮することで、
300人ものユダヤ人を救うことができたことも事実だと思います。
とはいえ、ラスト近くにて、
旦那さんが行方不明になり、手がかりを得るためにヘックを誘うというのも、
女が持てる強さとアピールなんだなあ……と思います。
もちろん推奨はされませんし、実際のアントニーナがどうしたかは知らないのですが、
描き方としては、女性をメインに描きながらそういう面を含めたのは、
プラスにもマイナスにもすごいことかなと思います。

個人的には、幻想すぎやしないかとも思うけども……
子供を探すためならわかる気がするんだけどなあ。

とはいえ、この小タイトルのように、「女の強さ」でまとめていいのかわかりませんが……

3.動物とアントニーナ

動物園は序盤で爆撃され、なくなってしまうので、
動物要素は一切なかったなあ……と見てから思いました。
スカンクとウサギくらいかな。
とはいえ、作中で「動物の目を見ていると自分の心の中がわかる」という言葉は私もうなずきました。
動物の目ってあまりに無垢なんですよね。
そりゃ「餌くれないの?」とか「寂しい」とか「こちとら怒ってるんや」なんて訴えてきますが、
何かを悩んでいるときに、動物と見つめあうと、
すごく落ち着きます。
その言葉について、アントニーナ自身も自分の「人間を信じられない」というエピソードとともに語っていましたが、
動物は嘘つかないってわかるから目を見つめられる、というのもあると思います。
まぁ嘘を隠すことはありますが笑

4.コルチャック先生

映画内でヤンがとても親しくしており、尊敬していた先生でもあるコルチャック先生。
実際の人物はどのような方なのか少し気になったので調べてみました。
映画内では、子供が怖がらないようにするために作り話をしていたり、
ゲットー内で教育を行っていたり、
出演時間は少ないですが、かなりインパクトのある登場人物でした。
調べたところ、ユダヤ人の孤児院を設立されたり、
子供の権利を提唱したり、
執筆活動や教鞭をとっていたこともあるそう。
マジですごい人でした。
この人だけでも映画一本作れますね。
(Wikipedia:ヤヌシュ・コルチャック

5.この映画の勧め方

なんとなくこの映画が賛否両論になったのもわかります。
どこまでが原作に忠実なのかがわからないので何とも言いかねますが、
映画としては、展開が早くハラハラする映画だと思いました。
「感動系の映画が見たい!」という人にはお勧めしません。
ホロコーストを扱う映画が見たい、といわれた場合は、この作品も挙げるかもしれません。
もちろんこの夫妻の功績は素晴らしいと思いますし、
語り継がれるべきことだと思いますが、
映画では娯楽映画っぽく見える気もします。

ですが、主役のジェシカ・チャスティンも素晴らしい演技をしているので、
見てほしいですね。

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