見出し画像

リスク回避と組織文化

多くの人や組織における、成長の鈍りは、「リスク回避」が大きな原因だと私は思っている。この記事では、リスク回避性向とそれがどう組織の規範(組織文化)になっているか、どう組織文化を変えるのか、について「Thinking, fast and slow」のフレームワークを使って書く。

Thinking, fast and slowのフレームワーク      ー SYSTEM 1&2 ー

ノーベル経済学賞を受賞した、著者による研究の集大成をまとめた、「Thinking, fast and slow」は、人間の意思決定システムについての経済学の常識をひっくり返す主張をしている。これまでの経済学の前提は、「人間は経済人である」というもの。すなわち、「情報収集のもとに、自己にとって最も利益のあるように意思決定する」ということであった。(あるいは経営人である、やはり満足できるレベルのオプションを論理的に選択するというもの)

画像1

                               ※画像元

Thinking, fast and slowで主張しているのは、人間の意思決定の95%は直観的・無意識(SYSTEM 1)で行われており、論理的に思考する(SYSTEM 2)のはたったの5%程度である、ということだ(上記の図の通り)。つまり今までの経済学の常識・前提とは全くの逆。

そして、SYSTEM 1は無意識下かつスピードがあるものの、エラーも多いという大きな欠点がある。だから、この理論に従えば、個人の意思決定の質をあげるには「SYSTEM1で楽をしすぎないでSYSTEM2を意識的に使う」ことが重要になる。

組織におけるSYSTEM 1 = 組織文化

Thinking, fast and slowは個人の意思決定について主に語っていたが、これが組織になると、SYSTEM 1は組織文化を示す。組織文化は、「組織構成員の間で共有されている信念や価値観」であり、基本的には無意識レベルで共有されている「当たり前」である。

「日本企業はリスクをとれない」なんて言われがちだが、それが本当だとすると、リスク回避的になっているSYSTEM 1(=組織文化)が存在し、それによって日々意思決定が行われている結果なのである。無意識のうちに、1/2で100万円得る機会より、確実に10万円得る機会の方が優れていると考えてしまうのだ。

どうしたらいい?

組織のリスク回避的な性向を排除するためには、組織に蔓延る特定のSYSTEM 1の抜本的な改革が必要になる。そのためには、SYSTEM 2を用い、最初は意識的に新しい行動をインストールし、旧来のSYSTEM 1が抵抗してもそれをSYSTEM 2で一々跳ね返し、とうとう新しい行動様式が新しいSYSTEM 1として定着するようになるまで、辛抱強く取り組まねばならないだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?