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久保 伶名/農事組合法人 川西

法人名/農園名:農事組合法人 川西
農園所在地:山口県山口市
就農年数:9年
生産品目:米、麦、大豆、野菜(玉ねぎ、キャベツ、はなっこりー、里芋、オクラ)
HP:なし

no.191

進路に悩んだ高3の時、農業大学校のポスターに「私の仕事だ」と直感

■プロフィール

 大工の家に生まれた3人姉妹の真ん中で、子供の頃から祖母と一緒に花を育てたり、小学校時代は夏休みの自由研究として野菜を育てるなど、植物を育てるのが好きな少女だった。

 将来は家業の工務店を手伝うものだと両親からは思われていたが、本人は大工になる気はなく、絵を描くのが好きだったので、高校卒業後は美術系の学校への進学を夢見ていた。

 進路の壁に直面していた高校3年生の時に、農業大学校のポスターに惹かれて、山口県立農業大学校に進学。2年生の9月に、農機具メーカーに就職した先輩からの紹介を受けて、農事組合法人「川西」で1カ月間の農業研修を受けた結果、卒業後は就職を希望するようになる。

 「川西」は農業者の高齢化で耕作放棄地が増えるなか、山口市の7集落の農家が集まって、共同で圃場整備するために作った組合が元になっており、兼業農家出身の小林紀代士さんが代表理事をつとめるが、当時は法人設立から7年しか経っておらず、従業員を雇用する計画はなかった。

 2015年4月に就職してから、現在は110馬力の大型農機具を乗りこなしながら、若手のホープとして後輩社員の指導育成にあたっている。

■農業を職業にした理由

 高校3年生の時に、進路指導室の廊下で偶然目にした農業大学校のポスターを見て、「これが私の仕事だ!」と直感する。

 子供の頃から植物を育てることは好きだったものの、農業には縁がない家庭だったため、両親から猛反対されたが、出願書類を全て準備して、あとは保護者が印鑑をつくだけの状態で手渡したところ、しぶしぶ入学が許可される。

 農業大学校に入るまでは人見知りな性格だったが、寮生活をおくりながら、先輩や同級生と交流するうちに、将来は「土に直接触れて野菜を作る仕事がしたい」という気持ちが芽生えるようになった。

 2年生の時には、学校所有の小型農機ではなく、写真で見るような100馬力以上の大型農機に乗りたいと先生や先輩に相談するようになった。そうしたなかで、農機具メーカーに就職した先輩から研修に行った農事組合法人「川西」を紹介されて、1カ月間研修を体験。

 卒業後は「ここで働きたい」と思うようになり、農業大学校に戻った後も、小林代表理事に何度も就職させてほしいと掛け合った。当時、「川西」では雇用計画がなかったが、熱心な思いに心打たれた小林代表が、本人には伏せたまま、規定などを整えて雇用に向けた環境を整えてくれて、卒論発表会には内定通知書を携えて現れたという。

 2015年に晴れて社員第1号となったあとは、大好きな大型農機具のオペレーションを中心に、操縦技術やメンテナンス技術を磨き、現在は主任として、栽培計画や作業管理、後輩の指導育成なども担当している。

■農業の魅力とは

 将来について悩んでいた高校3年生の時は、東日本大震災が起きた後で、周囲では被災地の農産物に対する不安の声も耳にしました。そこで自分で作った野菜なら、食べ物の安心・安全への不安もないのではと考えるようになり、農業大学校のポスターを見た時に「私の仕事はこれだ!」と直感したのです。

 実家がある宇部市周辺でも、農家の高齢化に伴って、田畑がどんどん減っていくようすを見て寂しく思っていました。現在、働いている山口市でも農家の高齢化で耕作放棄地が増えるなか、「川西」は、地域農業を守っていくために、集落が一丸となって組織を立ち上げて努力してきました。

 入社した頃、「川西」では最も若い世代が60代でしたから、10年後には高齢農家が引退し、私たちの世代が中心になって農地をまわしていかなければなりません。地域農業を守る一人として、就農以来、先輩たちから教えてもらったこと、学んできたことを、今度は若い後輩たちにつなげていきたい。

 農家出身ではない自分が、ゼロから独立就農するのは資金や農地取得など準備が大変だと思っていました。その点で農業法人への就農は、いろいろな作物を育てることもできますし、大きな農業機械を扱う機会もあるうえ、わからないことがあれば、すぐ近くに指導したり、相談できる人がいることが魅力です。

 私は大型農機の操縦やメンテナンスが好きなので、入社1年目にはオペレーターとして110馬力のコンバインを操縦させてもらっていました。川西は新しい技術の導入にも積極的なので、タッチパネルで操作するような最新機器の学びの機会も与えてくれます。

 本当はずっと機械に乗っていたいという気持ちもあるのですが(笑)、主任に昇格した今は、全従業員のスキルアップのために、人材育成にも力を入れています。自分たちの手で農業を進化させることへの手応えを感じていて、モチベーションは高まるばかりです。

■今後の展望

 「川西」は、私たち従業員4人と、地権者である組合員199人で構成する農事組合法人です。158haの農地を第一から第三まで区分して、圃場の整備から作付、収穫を協業し、農産物はJAや山口市内のスーパー、直売所などに出荷しています。

 最近は従業員だけで収入源を作ろうと、玉ねぎや里芋、オクラ、はなっこりー(ブロッコリーと中国野菜をかけ合わせた野菜)の栽培にも力を入れるようになりました。

 やりたいことはたくさんあって、今は5月に収穫した玉ねぎを加工したり、保管しておくための施設があったらいいねと後輩たちと話しあっています。

 技術は日々発達しているので、将来は座っているだけで自動収穫できる機械も開発されるようになるでしょう。今まで就農にはさまざまな障壁があると考えられてきましたが、今後は非農家出身者が脱サラして参入したり、コンビニのアルバイト感覚で手軽に農業を始められる時代が来ることを期待しています。

 私自身は、交際中の一般職の男性と結婚も考えていますが、家族経営の場合、結婚や出産を機に農業を離れなければならない女性が多いなか、職場環境が整備されている法人就農であれば、農業を諦めずに出産後に戻って来ることも可能です。

 農業でのキャリアも、プライベートな生活の充実も、両立させられるところが魅力です。

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