見出し画像

映画『BLUE GIANT』の《流れ》の詩学


「昔、仲間内ですごいジャズ奏者をBLUE GIANTと呼んでいました。
温度が高すぎて赤い炎が青く見える。

あのライブはとても青かった。」


ジャズの熱、その「青」の温度は、指先や口元から放たれ、金管を溶かすかのように流れ伝い、大きな音となって聴く者を魅了していく。

「青」は若さの象徴でもある。時が流れれば二度と戻らない、一瞬の輝き。時間芸術である音楽、その中でも即興を醍醐味とするジャズだからこそ、その一回性が十二分に伝わるのだ。



世界一のジャズプレーヤーとは何か。

「感情の全部を、音で言えるんです」

ライブシーンにおいて、奏者は目が眩まんばかりの輝きを放っている。

自分が世界に対して抱く感情を、音で伝えること。
照明を反射して、光を放つこと。

音も光も感情も、流れて伝うものだ。これらの現象はすべてパラレルになっている。
血や汗や涙も例外ではない。




世界一になる男の熱は、どこまでも広がっていく。
東京の路線のように、無数の方向へ。
川の流れや橋上の車の流れに乗って、あるいは雪の降る空に向かって、三次元に伝わっていくのだ。
電波に乗れば、その熱は海さえも遥かに超えていく。



「今は。止まっちゃいけない気がするんだ。
一日も、止まっちゃいけない気がするんだ。」

《流れ》は、途切れることなく続いてゆく。







*本稿で引用した映画『BLUE GIANT』の画像はすべて公式サイトで公開されている「N.E.W.」特別映像および予告編の映像からとっている(https://bluegiant-movie.jp/#modal)

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?