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読んだもの/観たもの/聴いたものなどについてちまちまと。

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最近の記事

映画『ブレードランナー』における「水の主題」

『ブレードランナー』(1982)は、酸性雨が降りしきるロサンゼルスを舞台とし、火星から逃亡して街に潜伏する人造人間を殺す任務を負うデッカードを主人公に据えた映画である。この映画の原作となった、フィリップ・K・ディックによるSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』(1968)では、人造人間はアンドロイドと呼称され、彼らは徹底的に「共感能力」に欠ける存在として描かれているが、一方で映画『ブレードランナー』では、人造人間はレプリカントという呼び名に改変され、キャラクター像もかな

    • 映画『BLUE GIANT』の《流れ》の詩学

      ジャズの熱、その「青」の温度は、指先や口元から放たれ、金管を溶かすかのように流れ伝い、大きな音となって聴く者を魅了していく。 「青」は若さの象徴でもある。時が流れれば二度と戻らない、一瞬の輝き。時間芸術である音楽、その中でも即興を醍醐味とするジャズだからこそ、その一回性が十二分に伝わるのだ。 世界一のジャズプレーヤーとは何か。 ライブシーンにおいて、奏者は目が眩まんばかりの輝きを放っている。 自分が世界に対して抱く感情を、音で伝えること。 照明を反射して、光を放つこと

      • 『下校オニ』におけるメタ構造

        先日、曽山一寿賞の大賞として、せがわひろわき作『下校オニ』がコロコロオンラインで公開された。筆者も先ほど読んだので、感じたことなどを少々。ネタバレには一切配慮しません。 ※「作品」や「テクスト」の解釈は一通りに定まるものではないし、作者が解釈を間違うことも往々にしてあり得る。本稿はその立場に立ったものであることを先に注記しておく。 「下校オニ」という遊びの構造 下校オニの動線 まず、下校オニのルールを整理してみる。 ①二人は「オニ」と「ニゲ」に分かれる。 ②ニゲは好

        • ultra soul 「メマイ…」論:文脈からの考察

          先日、QuizKnock CEOの伊沢拓司氏が『伊沢拓司の低倍速プレイリスト』という新連載記事の第一回として、B'z『ultra soul』の歌詞についての考察を投稿した。 筆者も先頃読んだので、これに乗っかる形で論考を書いてみたいと思う。 ※「作品」や「テクスト」の解釈は一通りに定まるものではないし、作者が解釈を間違うことも往々にしてあり得る。本稿はその立場に立ったものであることを先に注記しておく。 突然の「メマイ…」?伊沢氏の記事では、『ultra soul』の歌詞の

        映画『ブレードランナー』における「水の主題」

          『45510』考察 ~白米とガラスが表すもの~

          漫画『【推しの子】』の原作者・赤坂アカによる書き下ろし小説『45510』を読んだので、感じたことなどを少々。小説、漫画、アニメともにネタバレには一切配慮しません。また、アニメ『【推しの子】』の主題歌『アイドル』にも多少言及します。 ※「作品」や「テクスト」の解釈は一通りに定まるものではないし、作者が解釈を間違うことも往々にしてあり得る。本稿はその立場に立ったものであることを先に注記しておく。 「白米」と「ガラス」『45510』を読んだ者が覚える大きな違和感の一つに、白米と

          『45510』考察 ~白米とガラスが表すもの~

          『RRR』批評:火と水のモチーフから

          人生で初めてインド映画を見たので、感じたことなどを少々。ネタバレには一切配慮しません。 ※「作品」や「テクスト」の解釈は一通りに定まるものではないし、作者が解釈を間違うことも往々にしてあり得る。本稿はその立場に立ったものであることを先に注記しておく。 以下目次。 「火」vs「水」本作では、二項対立のモチーフがあまりにも分かりやすく提示される。「火」と「水」である。これ以上なく分かりやすい。そう書いてあるからである。 "The FIRE"編ではくすぶり続ける炎のような人物

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          Ado 2ndライブ『カムパネルラ』感想 ~銀河鉄道上での変身~

          Adoのライブに行ってきたので、その演出について感じたことなどを少々。ネタバレには一切配慮しません。 ※「作品」や「テクスト」の解釈は一通りに定まるものではないし、作者が解釈を間違うことも往々にしてあり得る。本稿はその立場に立ったものであることを先に注記しておく。 セットリスト 以下今回のセットリスト。 1. 夜のピエロ 2. ラッキー・ブルート 3. ラブカ? 4. ドメスティックでバイオレンス 5. 逆光 6. 私は最強 7. レディメイド 8. 阿修羅ちゃん 9.

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