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『お返し断捨離』(毎週ショートショートnote)

「アナタ、先日のお返しって言う人が来てるんだけど」
「お返し?」
日曜の午後。
会社の同僚、いや同僚だった青木君がウチを訪ねてきた。
「これ、どうぞ」
そういって駅前の洋菓子店の包みを手渡す彼の顔は
なんだか晴々としていたが
どこか危うげでもあった。

「今日は、先日のお返しに参りました」
そう言うが早いか、ずかずかと上がり込んだ。
「おい、いったい何なんだ」
彼の様子がおかしい。
何かを見定めるようにきょろきょろと部屋を見回している。
私はお茶の用意をしている妻を奥の部屋にやると
彼をソファーに座らせた。

「今日は断捨離に伺いました」
「断捨離?」
「あなたのお陰で無事、会社を辞めることができました」
「元はと言えばお前が」
「いえ、本心で言っているのです。
あなたの断捨離はそれは見事なものでした」
「・・・」
「そのお返しに、先ほど部長の家を断捨離してきたところです」
「え?」

青木はすくと立ち上がると部屋のものを
私ともども次から次へ窓から放りはじめた。

(410文字)


<あとがき>
本来の意味での断捨離とはちょっと違いますが
まぁ、青木君が知らなかったということにしておいて下さい。

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