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【採用マーケティングを理解する】就活で企業と学生に求められているのはスタイルマッチ(関西大学 講義レポート)

こんにちは、No Companyの広報担当です。今回は2023年5月16日(火)にプロデューサー兼人事の山根が講師を担当した採用マーケティングについての講義をご紹介します。関西大学 総合情報学部総合情報学科で、ポピュラーカルチャーについて分析・考察している谷本奈穂教授のゼミにお伺いして、企業の採用とマーケティングに関する講義を行いました。後半には社会人としての経験も伝えながら、就活・キャリアについての本音トークを展開しています。

講師紹介

(左:谷本教授、右:No Company山根)

谷本 奈穂
関西大学総合情報学部 教授
大阪大学大学院人間科学研究科修了。博士(人間科学)。現在、関西大学総合情報学部教授。専門は現代文化論、ポピュラーカルチャー論。単著に『恋愛の社会学』『美容整形と化粧の社会学』『美容整形というコミュニケーション』、共編著に『博覧の世紀』『メディア文化を社会学する』、分担執筆に『男らしさの快楽』『変貌する恋愛と結婚』『ファッションで社会学する』『反戦と好戦のポピュラーカルチャー』『昭和五〇年代論』など多数ある。

山根 康介
株式会社 No Company
プロデューサー/自社採用戦略統括
大企業→ベンチャー企業→フリーランスを経て、現在は地元の淡路島(兵庫県)在住。2023年4月から正社員として博報堂グループ会社のNo Companyに勤務。プロデューサーとして大型クライアントの課題解決に携わりながら、前職の採用責任者の経験を活かして採用・組織戦略にも携わる。

1.講義アジェンダとゴール

講義の当日は約90分間の授業を4つのセクションに分けて進行しました。目指すゴールは、各企業における最新の採用トレンドやマーケティングの取り組みを知り、自分たちのライフプランに合った働き方を考えられるようになること。博報堂グループ唯一の採用・HR支援に特化した事業を展開するNo Companyの採用マーケティングのこともお伝えしながら、学生たちが「自分のスタイルにあった働き方」を見つけるためのポイントを紹介しました。

<講義のアジェンダ>

  1. 自己紹介と今日の講義のテーマについて

  2. 企業の採用とマーケティング 最新情報

  3. 社会人が語る「就活・キャリアの本音トーク」

  4. まとめ・アンケート

今回の講義では、自らのスタイルやライフプランに合った就職・転職のあり方を考えられるように「スタイルマッチ※」をメインテーマにしています。各社における近年の採用活動でも、求職者と企業の「スタイルマッチ」が重要視されており、お互いのスタイル(個性や価値基準)をもとに採用マッチングが進められています。
No Companyでは、SNSのビッグデータを解析しながら人々の価値観やキャリア観を見ていますが、コロナの前後で比較すると「働き方」についての考え方が大きく変化しています。その背景として、会社が急に閉鎖されるなど企業としての安定感が揺らいだコロナ禍の状況が大きく影響しています。コロナ初期には、自由度の高いフリーランスや副業というキャリア形成に興味関心が集まりましたが、翌年には「安定志向」のキャリア形成に再び注目が集まるという動きがありました。
しかし、2022年頃からは「ホワイトすぎる企業では自己成長の実感を得にくい」と感じる若手ビジネスパーソンが増加。自分の将来を見据えたときに、「残業禁止など、ホワイトすぎる環境だと成長できないのではないか」という不安になる社員が増え、安定感のある会社かつ一定の負荷がかかる環境を持つ企業への興味関心が集まっています。

※スタイルマッチ……仕事内容や給与などの雇用条件だけではなく、お互いのスタイル(個性や価値基準)をもとに求職者と企業が選び、選ばれる関係になること。

大切なのはこれらのトレンドを踏まえつつ、自分のスタイルに合った企業を選ぶこと。そのためには、企業が採用とマーケティングでどのような情報を発信しているのか見ていくことが必要です。市場背景と各企業の考え方を理解することで、就職活動で「今するべきこと」が判断できるようになっていきます。

2.企業の採用とマーケティング 最新情報

①市場背景
各企業の採用状況を見る前に、市場背景をもう少し詳しくお伝えします。10年ほど前は、求職者が大手ナビサイトに登録し、企業認知・理解〜説明会参加・エントリーまで完結していました。

近年、企業の採用活動にはデジタルマーケティングが取り入れられ、SNSやWebメディアを活用した情報発信が進んでいます。しかし、コロナ禍に突入すると、オフラインでの求職者と企業の接点が失われ、説明会や就活イベントが中止となり、各企業のスタイルや考え方に触れる機会が失われたため、採用のオンライン化が急激に進みました。このような背景から、現在では、求職者にとってはオンラインでの情報収集がより重要になっています。


その結果、学生にもっと情報を届けようと各企業の情報発信の場がSNSにも拡大し、就活関連のメディアやコミュニティ、SNSアカウントが増えていきました。それが上記図の赤枠の部分です。
あらゆるメディアが活用されていますが、成功法がなく「採用の情報発信における戦国時代」といった状況です。企業規模にかかわらず、採用広報に年間数億円を投資する会社が増えています。YouTubeの企業公式チャンネルも乱立しており、就活生の6割以上がYouTubeの企業動画を見ているというデータ※もあります。
※レバレジーズ、プルークス調べ(2021)

また、ナビサイトの登録者数は増加していますが、ナビサイト自体を検索する量を表す検索ボリュームは減少しています。
つまり、企業と求職者が最初に出会う場所がナビサイトではなくなりつつあります。ナビサイトには存在しない求職者もたくさんいるため、企業はSNSや採用サイトなどのオンライン情報発信に注力するようになっています。
そして、noteでは社内のリアルな実情を発信するケースも増えています。そのため学生がメディアを活用するときには、採用メディアで各社のコーポレート的なメッセージを調べておいて、noteの企業アカウントでリアルな実情を知るようにするといいかもしれません。

みなさんが企業の情報を収集するのと同じように、企業側も学生と通年で接点を取るため、情報発信の内容を時期ごとに変えて、さまざまな工夫をしています。例えば、現在の5月中旬は学生たちが考える第一志望の企業に入るように、各社が情報発信に全力を尽くしています。SNS広告や合同説明会、採用メディアからの学生紹介など、あらゆるメディアを活用して第一志望入りに注力しています。

② 企業とはたらく人のスタイルマッチ
各企業が採用活動において最も重要視しているのは、「企業と働く人のスタイルが合うこと」です。学生側も、働くことが目的ではなく、自分に合ったライフプランを考えた上でキャリアプランを設計することが当たり前になってきています。

個人の価値観が多様化するなかで、従来の採用手法が通じないケースも増えています。私たちNo Companyは、企業を支援し「働く」をより良くするだけでなく、働く人や学生、教育といった社会的な構造にも今後アプローチすることで、「スタイルがいきる社会」を目指しています。

【参考】スタイルマッチを引き起こすための取り組み
 ▼企業ではたらく人の想い・価値観を発信する(KDDI株式会社)

▼はたらく人の声を聴き、インサイトを把握する(パナソニック株式会社、note株式会社)

▼企業のパーパスに対する、社員の考えを発信する(パナソニック株式会社)

▼組織ビジョンを言語化する(株式会社メルカリ)

③ 企業の採用とマーケティング
近年、採用市場が変化し、採用の難易度が上がり、採用マーケティングの重要度が増しました。
企業は、自社の価値を明確にし、優秀な人材を採用するために、ターゲットが見ている媒体を選び、情報を発信することが大切です。

ただし、企業によって優秀な人材の基準は異なります。例えば、スタートアップが求める優秀な人材は、積極的に行動できる人です。スタートアップは大手が参入する前に市場のシェアを拡大する必要があるため、一歩目の行動が早い人が重宝されます。
一方、大企業では、セキュリティやコンプライアンスを優先しながら行動できる「守備力」のある人材が求められる側面もあります。採用市場では、企業のスタイルに合わせた学生の個性とスタイルを見極め、相性を重視することが重要です。

学生の皆さんが就職活動を進める上で、採用にも活用されているカスタマージャーニー※の考え方を知っておくと良いでしょう。商品・サービスを選ぶときの人の行動は、「認知(知る)」、「共感する」、「比較検討する」、「行動する」の4つに大きく分類されます。就職活動においては、入社する会社を選ぶことが該当するでしょう。
採用マーケティングの目的は、求職者に自社を選択肢に入れてもらうことです。良い人材を確保するために、自社の魅力をアピールすることが大切です。そのためには、求職者の興味や関心、キーワードを把握し、それを踏まえた上で、カスタマージャーニーのどの段階で、どんなコンテンツを誰にどのように届けるかを設計することが非常に重要です。

※カスタマージャーニー……顧客が商品やサービスを知り、購入・利用意向を持ち、実際に購入・利用(再購入)するまでに、顧客がたどる一連の体験を「旅」に例えたもの。

No CompanyではSNSのビッグデータを解析して、SNS上で若い世代に注目されている企業、団体・組織200社をまとめた調査データを公開しています。大手の就活サイトなどでは見かけないような企業も数多く掲載しています。気になった企業についてHPで調べながら、どんな人たちが働いているのかを知ることで、自分のスタイルに合う企業と出会える可能性が広がるのではないでしょうか。

3. 活躍する社会人が語る「就活・キャリアの本音トーク」

授業の後半では、ゲストを招いて「学生時代」「就活」「ファーストキャリア」の3つのテーマについてトークセッションを行いました。参加者全員が学びを深めるために、自分たちが経験したことや学んだことを共有しました。

パネリスト紹介

雨谷 里奈
2016年、株式会社リクルートに入社。法人営業兼リクルーティングアドバイザーとして、中小企業の採用支援を担当。2019年、NEWSTANDARD株式会社に転職し、コンテンツマーケティングを中心としたタイアップ記事の企画編集、制作ディレクションに携わる。2021年に独立し、コンテンツディレクション、採用広報、カメラマンなど幅広く活動。

①学生時代「就活前はどんな準備をしていたのか?」

山根:就活前には資格の勉強をしていなかった代わりに、社会人としての経験を積むことに力を注いでいました。16年前はインターンシップの機会がなかったため、厳しいことで有名なアパレルブランドの店でアルバイトをしていました。アルバイトスタッフには日々の売上目標が設定され、レジには達成状況が表示されていました。就職前に貴重な経験を積むことができたので、学生時代に社会人としての働き方を疑似体験することをおすすめします。

雨谷:私が学生のころは、今と同じように各社でインターンが行われていたので、いろんな企業のインターンを経験しました。実際に働きながら「自分はどんなことが好きなのか」「何が強みなのか」を探していましたね。その中で、たまたま受けたブライダル業界の会社から最初に内定をもらいましたが、内定式に行ってみたら全然雰囲気が合わなくて……。自分のスタイルと全く違う環境に不安になり、将来働いている自分のイメージも湧かなかったので、辞退させていただきました。

山根:内定式で辞退されるケースはよく聞きますね。その意味でも、自分のスタイルと合っているかどうか、違和感がないかどうかのアンテナを張っておくのは大切だと思います。

雨谷:そうですね、その後で自分の価値観やスタイルに近い会社に就職できたので、今振り返ると正しい選択だったのかもしれません。

② 就活「学生に戻れるなら、どんな就活をする?」

山根:もう一度学生に戻って就活をするなら、長期インターンに絶対行くと思います。インターンにはいくつか種類がありますが、1DAYで行われているのは会社説明会と簡単なワークなので、学生にとっては「お試し」のような体験になります。短期の1DAYインターンなどを通じて、業界や企業について知りながら、長期のインターンでは、周りよりも早くビジネスパーソンとしてのスキルセットやマインドセットを整えていきます。

雨谷:たしかに、長期インターンではいろいろなことが学べます。深く大人と関わって、社会人としての力を底上げするにはいいかもしれません。

山根:ええ、興味のある会社があったら、長期インターンの募集ページがなくても、まずは一度問い合わせてみるといいかもしれません。本格的に募集をかけていなくても、自社に興味を持ってインターンを希望している学生がいたら、結構何とかしてくれます(笑)。長期インターンは普通のアルバイトよりも収入が良かったり、内定につながったりするケースもあるので、学生の皆さんにおすすめです。

③ ファーストキャリア 「20代で活躍する人の特徴」

山根:20代で活躍する人の特徴は「目の前のことに真面目な方」だと思っています。「真面目」というのは、会社から依頼された役割や業務に対して、しっかり取り組む人という意味です。例えば、学生時代に優秀だった人は100件のアポを取ってくるように言われても、2件だけのアポでそれを受注につなげます。そのときは褒められたりするのですが、真面目に100件のアポを取ってきた人との間に大きな「経験」の差が生まれているのです。

雨谷:なるほど、真面目に取り組む人はしっかり「経験」を積んでいくけど、優秀でサボりがちな人は最小限の仕事しかしないんですね。なんとなくわかります(笑)。

山根:はい、その結果は3年後くらいにあらわれます。コツコツ真面目にやってきた人は、それまでの経験を活かしてどんどん活躍できる。一方で、優秀であるがゆえに仕事をサボりがちな人は、経験不足で結果を出せないことも多い。それを周りのせいにしたり、理屈をこねくりまわしたりして、自分にも仕事にも真面目に向き合えない方は、頭打ちになり活躍しにくいと考えています。

雨谷:優秀なのにもったいないですよね。私も新卒で営業をやっていたときに、優秀な人がたくさんいました。
当時、外回りの営業で同期の若手10人くらいで1棟のビルの上から下までピンポンして名刺をもらった数を競っていました。しかし、優秀な人は効率よく名刺交換して仕事につなげることができるので、サボりがちでしたね(笑)。

私は負けず嫌いなこともあって、名刺の枚数だけは同期に負けなかったのですが、そのときにもらった名刺を今も大切にしています。数年後にフリーランスになったとき、当時のご縁から新たに仕事をいただいたこともありました。
学生の皆さんは、これからどんなキャリアを歩むのか想像できないかもしれませんが、点と点がつながる瞬間が必ず来るので、人との出会いを大切にしてほしいと思います。

山根:出会いは大切ですよね。自分に合った企業にも出会えるように、日頃感じている想いや価値観も含めた自分のスタイルを言語化していってほしいと思います。情報を自分から発信することで、企業とのスタイルマッチがしやすくなっていくと思います。

4.まとめ・アンケート

実際に講義を受けた学生の皆さんからいただいた意見・感想もいくつか紹介します。

  • ライフスタイルに合わせて企業を選ぶという発想がなかったので非常に勉強になりました。

  • 就活の進め方について不安があったが、企業の採用情報の掴み方や体験談を聞くことによって少しイメージが掴みやすくなりました。

  • 帰りの電車やバスで興味のある企業について調べてみたいと思いました。

  • とりあえず情報を集めてインターンの申請をしようと思いました。

自分に合った企業選びを実現するためには、自分のスタイルを知り、企業の意図や目的、採用の構造など「企業のスタイル」を知ることが大切です。企業から発信されるさまざまな情報に触れることで、各社のスタイルの違いがわかるようになり、「自分のスタイル」に合った会社を選べるようになります。ライフプランを考える上でも重要なポイントなので、ぜひ「スタイルマッチ」の考え方を身につけていただければと思います。


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