見出し画像

なぜか読後感は明るい。 書評『平成はなぜ失敗したのか 失われた30年の分析』

幻冬舎 (2019/2/7)

僕が今参加しているNサロンで情報整理術ゼミの講師をされている野口悠紀雄氏の新刊です。
不勉強でゼミに参加するまで野口氏のことを知らず、まずは著作を読もうということで購入。

野口氏は1940年生まれの78歳。

東大工学部から大蔵省へ。実務経験を積み、そこからエール大学、一橋大学、東京大学・・・と学術の道へ。現在は早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問および一橋大学名誉教授を務めていらっしゃいます。

文筆業も非常にさかんで「超・整理術」や「超・独学法」「超・勉強術」といった何冊ものベストセラーから、最近ではビットコインとブロックチェーン、AIの本を書いていたりと、実際にゼミで講義も受講しましたが、非常に聡明でパワフルな方でした。

そんな野口氏が平成の終わりに主に経済的側面から、また「自分史」としてこの30年間を振り返った本です。

本のタイトルからすでにわかるように、平成30年を失敗の歴史、と結論づけ
なぜ失敗したかを、時系列に沿って説明していきます。

これだけ見ると暗く厳しい内容なのかな、と感じるかもしれませんが、その実、野口氏の丁寧かつ淡々としたどこか爽やかさを感じる文体、また所々に挟まれる当時の回想(主に「人」について)から感じられる実直な性格の影響で、そこまで暗さは感じません。

バブル時代の分析はともかく、現在のアベノミクスに関する評価などは人によって別れるのでしょうが、この30年を読み物的に振り返るには最適な本だと思いました。

そもそも本の初めから、読んでいる人自身の「自分史」を年表に書き込めるようにしていたりと、筆者と一緒に平成を振り返ろう、という工夫があります。

極め付けは最後に「平均でも自分は88歳まで生きる」と語った後で、

そうであれば、私は、平成のつぎの時代を、かなりの期間、生きることになるでしょう。もちろん、ただ生きているだけでは意味がありません。健康な体を維持し、なすべき課題を持っていることが大事です。
ところが、この章で述べたように、そして幸いなことに(?)、日本は平成のつぎの時代において、多くの課題を解決しなければなりません。それに少しでも役立つことができれば、と考えています。  

とまだまだ皆さんと一緒に頑張るぞ、という圧倒的当事者感

この一文だけでも野口悠紀雄氏のファンになってしまいました。

野口氏はnoteでも積極的に情報発信を行っており、この『平成はなぜ失敗したのか 失われた30年の分析』も一部公開されています。

僕は今36歳。

バブル崩壊、阪神淡路大震災、オウム、サカキバラ、9.11、リーマンショック、東日本大震災と、何やら全体的には暗い世代な感じもします。

でもそこに青春はありましたし、楽しい思い出もありました。

この本を読んで改めて、「みんなと一緒に自分も頑張ったいい時代だった」と胸を張って振り返れるように、次の時代も生きていきたいと思いました。

この記事が参加している募集

推薦図書

読んでいただきありがとうございます!頂いたサポートはnoteで他の方のサポートに使わせていただきます。