見出し画像

第九章 再修羅場⑩

オシャレって言っても、この顔じゃ……。

とりあえず、化粧だけはきちんとしよう。

さっきは、安奈に見せつける為に化粧はわざと薄めにした。

けれども、今回は……。

ファンデーションを思いっきり塗りたくる。

ファンデーションやコンシーラーを塗りたくれば、多少は傷も目立たない。

それに、店内なら。

薄暗くて、本当にこの傷は目立たないだろう。


「一哉、何着て欲しい?」

「そうだなあ」

あたしの服でいっぱいの華やかなクローゼットを引っ掻き回す一哉。

一哉が選んでくれたコーディネート。

一哉だってモデルの仕事をしているのだから、当然センスがいい。

自分でブランドも立ち上げているくらいなのだ。


それから、やはり大きなサングラスをかけた。

髪の毛も、そのままサイドに垂らす。

髪を上げる勇気は、さすがにない。


「じゃ、行こうか」

一哉がそう言って、ちょうど走ってきたタクシーを止めて乗り込んだあたし達。

当然、お酒を飲むから。

ポルシェでは行けないのが、とっても寂しい。


先にスーパーライトへと入っていた安奈。

髪型が、先程とは異なっている。

わざわざ洗って、またセットをやり直したのだろうか。

そして、あたしと一哉が一緒に店に入ってきたのを見て、あからさまに顔を引きつらせているのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?