『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク』ジョン・スラデック(著)鯨井久志(訳)
ナンセンスギャグSF。自我を持つロボットが実験で人を殺す、という森博嗣が書きそうな出だしで胸が高鳴ったが、その後は厭世的、グロい、こってりで胸焼け気味。短編だったら良かったのに。
お話は、ロボット3原則を守らせるアシモフ回路が壊れたロボ、チク・タクが主人公。人殺しに端を発し、どこまで罪を重ねられるか、という実験を始める。
人を殺せるロボットというと、弊機こと『マーダーボット・ダイアリー』を思い出すが、本書は真逆。前者は愛がテーマだが、本書は憎悪と狂気のお話。ロボだけでなく、人間も狂っていてすごい。時計じかけのオレンジっぽいかな。
本書はブラックユーモアの塊なのだが、一番おもしろいのは、ロボットの罪を人間が超えていくところ。
主人公は人殺しや強盗など罪を犯しても、人間がもっと醜悪なので罪が霞んでゆく。なのでチク・タクはもっと大きな罪を犯すしかなくなり、どんどんエスカレートしてゆく。チク・タクの復讐(明記されてないけど)が全然実らず笑ってしまう。人間の醜悪さこそがメインテーマだと知れる。
時間軸がごっちゃになってたり、所有者が転々としたりで、読みにくさに拍車がかかってるのがもったいないな。
ちなみに、日本版のタイトルを原書のチク・タクから変えたのは、こういう事態が迫ってるよ、という暗喩? だとしたら、昨今のAIとの類似とか言ってるやつ同様でダサすぎるんですけど。
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