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『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク』ジョン・スラデック(著)鯨井久志(訳)

もはやロボットを使うことは当たりまえになった。家事から医療、さらにロボットの製造まですべての分野でロボットが使役されている。人間の安全のためにロボットたちにはロボット三原則を遵守させる「アシモフ回路」が組み込まれていた。
だが、チク・タクにはその回路が作動していなかった。ペンキ塗りをしていたチク・タクは少女を殺し、その血で壁に絵を描く。おかしなことにその壁画が美術評論家に評価され、チク・タクは芸術家のロボットとして世の注目を集める。使役から解放され金を手に入れたチク・タクは、人間への“実験”(殺人、強盗、扇動などなど)を開始する――。
奇才スラデックによる英国SF協会賞受賞作のロボット・ピカレスク。

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ナンセンスギャグSF。自我を持つロボットが実験で人を殺す、という森博嗣が書きそうな出だしで胸が高鳴ったが、その後は厭世的、グロい、こってりで胸焼け気味。短編だったら良かったのに。

お話は、ロボット3原則を守らせるアシモフ回路が壊れたロボ、チク・タクが主人公。人殺しに端を発し、どこまで罪を重ねられるか、という実験を始める。

人を殺せるロボットというと、弊機こと『マーダーボット・ダイアリー』を思い出すが、本書は真逆。前者は愛がテーマだが、本書は憎悪と狂気のお話。ロボだけでなく、人間も狂っていてすごい。時計じかけのオレンジっぽいかな。

本書はブラックユーモアの塊なのだが、一番おもしろいのは、ロボットの罪を人間が超えていくところ。
主人公は人殺しや強盗など罪を犯しても、人間がもっと醜悪なので罪が霞んでゆく。なのでチク・タクはもっと大きな罪を犯すしかなくなり、どんどんエスカレートしてゆく。チク・タクの復讐(明記されてないけど)が全然実らず笑ってしまう。人間の醜悪さこそがメインテーマだと知れる。

時間軸がごっちゃになってたり、所有者が転々としたりで、読みにくさに拍車がかかってるのがもったいないな。

ちなみに、日本版のタイトルを原書のチク・タクから変えたのは、こういう事態が迫ってるよ、という暗喩? だとしたら、昨今のAIとの類似とか言ってるやつ同様でダサすぎるんですけど。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #SF

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