『ダンジョン飯 全14巻』九井諒子(著)
完結したので一気読み。ギャグメインでありながら、まさかここまで綺麗に畳むとは、と感動。文句なしに傑作。最後の一コマまでギャグなのが美しい。
お話は、魔法やダンジョンがある世界、レッドドラゴンに敗れた主人公一行は、ドラゴンに食べられた仲間ファリンを一刻も早く蘇生させるため、ダンジョン内の魔物という超ゲテモノを食べる覚悟をして下層へ挑む。しかし主人公ライオスは昔から魔物が大好きで、いつかは食したいと思っており…。
魔物食が全体を通したテーマ。動植物だけでなく、ミミックや動く鎧、精霊なんかも調理してて予想を超えてくる。魔物の造形、生態がかなり考え込まれていて感動する。おまけページで補完までしてくるあたり、もっともっと考えられてるのだろう。作者の想像の上澄みだけをいただいてるのを感じる。
ファリン救出は、ドラゴンを倒して終了かと思いきや、第1部完。そこからダンジョンの秘密に迫ってゆく。ここから西エルフとか登場人物が増えてゆくので、リアルタイムで追ってた時は単行本発刊の合間で記憶が揮発して大変だった。まとめ読み推奨。
魔物食だけでも面白いが、それを楽しむ主人公、いやいや食べる仲間などの常識や倫理観ギャップで笑わせてくる。魔物は嫌がるくせに白子は食うのか? 等々やり取りがずっと楽しい。
それでいて仲間同士の信頼が盤石なのが美しい。命を預けあってるので当然かもしれないが、理解はできないけど信じてる、という姿勢がしびれる。
エピローグ手前、ライオスが皆にファリンを食べてくれとお願いするシーン、パーティの仲間たちの「うちのアホがすみません…」という照れた顔が最高に良かった。
ラストはダンジョンの秘密、世界の危機のお話になるのだが、主人公たちは終始一貫して、妹を救う、付随して魔物を食うというメインテーマがブレなかったのが本当に稀有。普通、シリアスになったり、正義や恋愛とかチープな展開になりがちだが、一切なく、クスリと笑えるラインをキープした。本当にお見事!
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