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経営戦略総論(12):巨大企業の躓き(日本の事例)

日本大手企業の躓き

日本でこれまで名門と言われてきた大手企業で、ここ10年近く、元気がないと言うか、事業運営に苦労している姿がたびたび雑誌で特集されている。

主な企業で言えば、東芝、パナソニック、三菱重工が当てはまるだろう。
3社とも売上高1兆円を超え、社員数10万人前後の巨大企業だ。これらの巨大名門企業が低迷していることから見出される共通点は何か?

少なくとも前回、米国の事例で紹介したような経営陣の株価至上主義が原因には無っていないようだ。

どの企業も多くの事業領域、製品を持っているが、一度、どこかの事業で足を引っ張られると、それを他の事業領域や新規事業でカバーが出来ずに、グループ全体としても、だんだん元気がなくなり、ゆっくりと沈んでいくイメージがある。
端的に言えば、ポートフォリオ経営の失敗のように見えるのだがどうだろうか?


日立の事例

一方、一度沈んだ巨大企業がV字回復を遂げ、しっかりと再生・成長路線に蘇った事例として、日立グループがあげられます。

川村 隆元会長に始まり、中西宏明氏、東原敏昭氏と歴代社長による事業領域の取捨選択(組み替え)、大胆なM&Aを伴うポートフォリオ経営が徹底されています。日立グループの改革は継続的に続けられ、日本を代表するグローバル企業としての地位をより確かなものにしている印象があります。

以前、中西元会長のお話(講演)を聴く機会があったのですが、
一連のポートフォリオ改革の内容とともに、日立のLumada戦略に対して、
「GEのPredixはarrogant(傲慢な)サービスだ。あなた(お客様)の
 データを預けてくれれば、我々が分析してやるよと」
「会社としても、ちょっとarrogantだし。。」(オフレコ!?)
と前回のnoteに書いたGE・米国企業の躓きを予見していたかのような発言をされたことが耳に残っています。


コングロマリット・ディスカウント

日本の巨大企業が躓くのは、米国のようにトップの暴走では無さそうです。そして、本当のところは現場のイノベーションや改革が足りないからでもないように思えます。

グループ再編や組織改革を行っても、トップや幹部人事を変えたとしても、全体で見れば本質的な事業構成があまり変わっていない。低成長や赤字事業を祖業だから、かつての中核事業だからと温存してしまう。イノベーションの萌芽が見られても、そこに大胆な成長投資が打てていない。

つまり、ポートフォリオ経営がしっかりと機能していないことが主たる原因のように思えます。以前のNoteで紹介したように日本企業は「事業部門連邦制」であり「勝手にやっている現場の集合体」に陥っているのかもしれません。

また、イノベーションにおいても、現在は社内リソースによる研究開発とともに、社外とのオープンイノベーション、M&Aの両方を合わせてもっていないと、グローバル競争の世界では圧倒的に不利です。

経済産業省の産業構造審議会における「国内投資拡大・イノベーション加速・所得向上に向けたグローバル企業の経営について」という資料の中でも、海外M&Aは増えたものの肝心の国内事業再編はそれほど進んでいないことが指摘されていました。

皆さんの今後の事業経営のヒントになればと思います。

経済産業省 第11回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2023年1月27日 資料5 より


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