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経営実務のための会計(2):管理会計

財務会計と経営分析で基礎的な会計知識を学んだ後、ぜひ本格的に学んでおいて頂きたい分野は経営意思決定に必要な会計知識、管理会計や戦略会計と呼ばれる ”Managerial Accounting” の分野です。

財務会計や税務会計は制度会計と呼ばれ、決算書の公開や納税を伴うため、企業会計原則に則って作成されなければなりません。

一方、管理会計は文字通り、管理(マネジメント)のための会計です。項目的には「原価計算」「CVP(損益分岐点)分析」「投資回収分析」「組織別業績会計」などが上げられます。

基本的な内容は上記の金子智朗さんが書かれた「管理会計の基本がすべてわかる本」が初心者にはお勧めです。

そして、その次にぜひ、皆さんに読んでいただきたいのは高田直芳さんの書かれた「ほんとうにわかる管理会計&戦略会計」です。

ページ数は600ページを超えるかなり分厚い本ですが、目次タイトルを見ただけでも興味が沸きませんか? 

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 管理会計は、制度会計の限界を超えられるか
 (一般に公正妥当と認められた“粉飾”決算/量産効果を叫ぶのは、
  場当たり経営の代名詞/世にも不思議な固変分解の世界 ほか)
第2部 CVP分析と直接原価計算が、管理会計の扉を開く
 (だったらCVPから始めよう/近くて遠き仲ー変動利益と営業利益
  /CVP分析から生まれる指標 ほか)
第3部 戦術会計と戦略会計の世界に飛び出そう
 (果てしなき時空の旅が始まる/差額収支分析の考え方さえわかれば
  大丈夫/戦術会計の面白さを知ってほしい ほか)


実際の中身も会計学講義の教科書のような堅い解説形式ではなく、各節ごとに架空企業の中でのやりとりで始まり、会計データを使って物語風に謎解きをしながら、管理会計の手法や分析の落とし穴を学んでいくというものです。

経営実務の中で使いこなしていくには、会計分析手法の理論だけ学んでも、実際の現場で様々なケース、悩ましい問題に対峙した経験がないとその企業にとって本当に有益な分析はできません。この本に書かれているような経理課長や経理マン・ウーマンが経営者の右腕としていてくれたら、どんなにか心強いかと思います。

TOC理論

物語(ストーリー)で会計データや分析手法を学びながら、会計上の通説や誤謬を見破るという意味では、エリヤフ・ゴールドラッドの「ザ・ゴール」や「チェンジ・ザ・ルール」が有名ですね。

前者は 機械メーカーの工場業務改善プロセスが、後者はERPソフトで急成長中のソフト会社が舞台となっていますが、いずれもTOC(Theory of Constraints=制約条件の理論)をベースにして、興味あふれるストーリーが展開されていきます。

初版の「ザ・ゴール」の邦訳版が長い間(17年間!?)出版されなかった理由について、「解説」に著者エリヤフ・ゴールドラット自身のコメントが書かれていたそうです。それによると、

日本人は、部分最適の改善にかけては世界で超一級だ。その日本人に『ザ・ゴール』に書いたような全体最適化の手法を教えてしまったら、貿易摩擦が再燃して世界経済が大混乱に陥る」

ということらしいです。

経営者や経営企画部門のメンバは常に全社を俯瞰して、部門最適から全体最適を図る立場にあります。その意味でも、会計データや経営管理数値の見方を経理部門任せにせず、自分自身でも、より深くしっかりと考えていくべきだと常々、感じています。

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