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組織開発(1):基本編

今回から組織開発(OD : Organization Development)のお話をしたいと思います。

組織開発(OD)とは?

皆さんは「組織開発」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか?
「人材開発」と良く間違えられるようですが、米国で1950年代後半ごろから提唱され、Orgainization Development:ODとして、経営学の研究分野の一つになっています。

日本におけるOD研究者のネットワーク OD Network JapanのHPでは以下のように解説されていました。

「組織開発とは、組織の健全さ(health)効果性(effectiveness)自己革新力(self-Renewing capabilities)を高めるために、組織を理解し、発展させ、変革していく、計画的で協働的な課程である」とウォリックは定義しました。

何だか難しいそうな定義ですが、欧米の研究者たちの学術成果を元にしているので、致し方ないかもしれません。この辺の欧米での研究成果や書籍は次回、紹介したいと思います。

日本企業における「組織開発」

さて、私が始めて組織開発というテーマに興味を持ったのは1998年にスコラ・コンサルトの柴田昌治さんが書かれて、ベストセラーとなった「なぜ会社は変われないのか」を読んだ時からです。

当時は始めて人事部に異動し、課長をしていた頃だと思いますが、採用や昇格人事、人材開発など幅広く人事業務を担当する中で、人事部では当然とされてきた「人事業務は格あるべし」といったこれまでの枠組みを超えて
なぜ、近頃の組織は組織内の本音のコミュニケーションが淀みがちで、
昔のように多少辛くとも和気藹々した活性化が難しいのか?」
について
深く考えされられました。

これまで日本企業の強みとされていたチームワークが、大なり小なり、実は男性中心・飲みにケーションをベースに「同じ釜の飯を食った仲間」「言わなくてもわかるだろう」といった村社会的なコミュニケーションに支えられていたのが、電子メールの普及、女性・外国人へとダイバーシティが拡がるにつれ、日本企業の従来のやり方では機能しなくなっていたのです。

この書籍では、これまで飲み屋やたばこ部屋など限られた社員が密室でしていた雑談を、真面目に業務として行うこと、オフサイトミーティング(まじめな雑談コミュニケーション)の導入を提唱しています。

柴田さんはその後も「40歳から会社で何をどうするか」「なぜ社員がやる気をなくしているのか」「できる人が会社を滅ぼす」など、どのタイトルも刺激的ですが、日本企業の組織力やコミュニケーションの問題に深く切り込まれ、組織開発の第一人者として、いまもご活躍されています。


その約10年後、2008年にジェイフールの高橋克徳さんを中心に共同執筆された「不機嫌な職場」もベストセラーとなりました。

この本では、さらに日本企業における「組織のタコツボ化」が進み、自担当や組織を超えて協力し合うどころか、「職場がギスギスしている」状況に危機感を訴えています。

この本の裏表紙には、以下のようなことが書かれています。

人と人との出会いが新しい仕事を生む!
グーグルはかつての日本企業と同じようについ最近まで「社員旅行」を行っていた。・・・また、社内に種々のゲームが置かれている。面白いゲームには人があらゆる部署から集い、興じる。(一部、抜粋)

前々回までにテーマにしていた「両利きの経営」や「イノベーション組織」にも通じる話ですが、グーグルなどイノベーション重視の組織では、実はかつの日本企業のように雑談を大切にし、新たな形の仲間意識、コミュニティ文化を意図的に醸成しています。

日本企業が効率化や売上・利益重視によってマネジメント(管理一辺倒)に傾き過ぎてしまった弊害について、すでに90年代後半から警鐘が鳴らされていたのです。

では、なぜ、これまでトップダウンによる管理一辺倒のマネジメントと思われていた欧米企業が、組織活性化というテーマに目を向けていったかについて、次回、考えてみたいと思います。



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