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傲慢と善良


婚活をしたことのある人なら誰でも
微妙に当てはまったり
ずきっ とか ぎくっ とかそういう感覚を持つかもしれない。



指輪も貰って、結婚式場も決まって
退職した翌日に、失踪してしまった女性 真実
この、まみさんという名前が、読んでいるうちに
「真実(しんじつ)」という言葉と重なってくる。

彼女は嘘がつけなかったし、ついてはいけないと思っている。
親に支配されていたから。相互依存だったから。
親をごまかして遊びに行くこともできなかったし
飲み会で遅くなったら、
次から両親とも起きて待っているから と脅され
そう言われた直後に「もっと家事を手伝え」とも言われる。

いろいろな事があって、群馬県から東京に出てくるのだが。


自分のウソがばれている とわかり
逃げ帰ろうと思って辞め、
その時に最初の見合い相手が言っていたボランティアに連絡してみる。
そのこと自体が、真実にとっては画期的だっただろう。
そしてほとんど身一つで東北に行ってしまう事も、
それまでの彼女の行動からはあり得なかっただろう。

いろんな事情のある人がそこにくる というのにも私も少し驚いた。


二月に失踪し二か月過ぎてから携帯に電源を入れ
結局会ったのは、七月。
結婚式場は・・・・


写真の修復のボランティア
その後は、地図に一軒一軒の家の場所を書き足していく仕事。

読めばそういう仕事もあるんだなぁとは思うけれど
真実の内面の、修復と再構築と他者と善意で関わることとが
深く重なっていく。

地縁のような、
ある種自意識過剰にならざるを得ないようなところから離れ
親の呪縛から逃れ
自分自身の虚栄心や傲慢さと向き合っていったのだと思う。


婚約者の架(かける)の方も、
真実のことを知ろうとする中で自分の気持ちとも向き合っていく。

そして女友達の残酷さと、自分にもあった不誠実さにも気づく。

そういう半年を過ごすのである。
会えない時間に相手を理解しようとし続ける。
確かに、大恋愛だ。
実にうらやましい。



自意識過剰で、良く思われたいという虚栄心
傲慢さとプライドと。
良く思われたい という言葉は
現代ではマウントとれる立場になりたい と同義なのだろうか。
違うと思うんだけど。


良い作品だった。






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