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子育ての文化を学ぶ

11月24日25日に、宇治にあるnpo法人子育てを楽しむ会及び子育ての文化研究所の迫きよみさんに、マンツーマンレッスンを受けました。


迫きよみさんは、一般社団法人ジェイスの仲間です。
子育て支援をしている方ですが、抱っこについて個人で研究し続けている在野の研究者でもあります。FBグループページの「抱っことおんぶを語る会」(今はアーカイブになっていますが、たくさんのことが学べます)の管理人を一緒にさせていただいていました。いろいろなことを教えていただいてきたので、随分前から、一から迫さんにくっついて赤ちゃん親子のことについてもっと勉強したいなあと思っていました。

迫さんがなさってきたことは、例えば、こちらのウェブサイトで見ることができます。抱っこについて勉強するなら、ここがお勧めです。誰でも情報を得ることができます。無料でこれだけの内容を学べる情報ソースは他にないと思います。

ただ、私は、20代の頃から、この人の実践を学びたいと思うと、直接その人のところに行ってひっつく、という形でいろいろなことを学んできたので、今回もその方式で学ぶことにしました。

迫さんには、今までに十分にやり取りしてきたのに、どうして今さら?と言われましたけれど、住む場所も京都と東京ですから、日頃会えるわけではないし、ひっつかないとわからないことってあるんですよね。

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いまどきは、抱っこのプロ、と名乗る人も数多くなりましたが、迫さんはそういう流行が起きる前からずっと、現場で抱っこのことを深く理解する必要性を感じて、抱っこの研究をしてきた方なのです。

子育て支援のはしりを担うリーダーとしてさまざまなコミュニティ活動を展開する中で、抱っこ紐の研究の必要性に誰よりも早く気がついたのです。

身体のプロ、抱っこ紐のプロ、助産師さん、保健師さんなどいろいろな人たちが抱っこ紐のことについて語りますが、迫さんは「抱っこの専門家」でも、「赤ちゃんの研究者」でもなくて、現場で「親と子が生きることを支え続けてきた人」です。

現場にずっといるから、年間何百人もの赤ちゃん親子に出会っていて、
その中には、抱っこを「プロ」という人に教わったけれど子育てが楽にならない、あるいはむしろ苦しくなったという悩みを抱えた親子も少なくなくて、そういう事例をたくさん経験しながら、赤ちゃん親子の生活全体に渡る総合的な観点で、色々伝え方を工夫したり、それとなく日常会話の中でアドバイスをしてきた方なのです。

5人姉妹の長女としての妹育て経験、重度知的障害者の施設で働いてきた経験。いろいろな体験の上に、わからないことがあれば、京都から東京まで夜行バスで出て来て、国会図書館で古い本を探して読む、という勉強を重ね、私の知る数多くの大学教授たちにもまして研究熱心に赤ちゃん親子のことを考えてこられました。
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だから、私は、実は、抱っこの仕方を学ぶためだけにレッスンを受けたかったわけではなくて、彼女の好奇心や探究心や五感の働かせ方やセンス、生活の視点といったものに関心があったのです。

本当は最低でも一か月位は京都に泊まり込んでかばん持ちをしたい、
とずっと思っていたのですけれど、今回、ちょうど、迫さんが仕掛けた赤ちゃんの口腔発達についての丸茂義二先生の研修会があったので、そこに参加する機会(と広島大学で中国四国教育学会ラウンドテーブルの指定討論者として登壇予定があったので、その間の2日間)を利用して、紅葉の季節に、迫さんを独り占めして、赤ちゃんに対する迫さんの姿勢をいろいろと教わったのでした。

研修会翌日に居残り勉強もしました。
紅葉が見たいという私を誘って朝のドライブに連れて行ってくれました。

本来、このマンツーマンレッスンは、
抱っこひものことなどを中心に子育て支援者が学ぶ10時間
として設定されているはずなのですけれど、
私は特別にお願いして、まず、迫さんがこれまでに学んできた様々な分野の方たちのお話を改めてうかがいました。

迫さんがご自身の企画する講座に招いた講師の皆さんについて、なぜその講師をお呼びしたのか、講師の先生方が赤ちゃんを巡る専門性のマップのどこに位置しておられるのかを知りたかったし、講演やその折衝を通して迫さんが皆さんから学んだことが何かをうかがいたかったのです。

こちらはレッスン前日に研修講師のお一人だった保健師の町村純子さんが、オーダーメイドの赤ちゃん人形の仕上がりを確認しておられるのを見ながら、みんなでいろいろ話しているところ。
実は、迫さんにご紹介いただいた町村さんには、8月に2日間、ひっついて学びました。

また、迫さんの運営なさっている子育てのつどいのひろば・りぼん、と、ぽけっとおうちで、目の前の赤ちゃん親子の見立てと接し方を見せていただきました。

赤ちゃんはちゃんと対話してくれました

ちょっとくたびれていたタイミングで、迫さんが学んでいるクレニオセイクラルセラピーも体験させていただいて、とっても気持ちよかったです♪ 赤ちゃんに「近づく」「触る」ときに何を考え、何を感じるかを体得するためのトレーニングですね。

そして、もちろん、迫さんが長年、収集、研究してきたさまざまな抱っこひもの試着をして、それらを使いながらよりよい抱っこに調整できるかどうか、その可能性をうかがいました。なかなか難しい、どうしてもできないものが少なくない、ということがわかりました。また、そんなときに親にどう声掛けをしていくかも。

わりと布が薄くて、ホールディングしやすかったもの。
とにかくいろいろやってみる、
赤ちゃんの頭の重さを実感するための被り物でちょっと遊ぶ。


私自身は、一昨年、孫のシッターをするにあたって、インドネシアのカインゲンドンという一枚布を迫さんから購入して(インドネシアの物価なので、安い!一般的な抱っこ紐の10分の1の値段です)、それが一番、自分と赤ちゃんにぴったり合う抱っこひもだと思っています。
(カインゲンドンは、スリングの原型だそうです)
(カインゲンドンの使い方は、簡単に巻き付けるだけという方法もあるのですが、私はしっかりした結び目を作る下の方法を使っています。下の動画の一番下の左側の丸い矢印をクリックすると見られます)

実は、一回作った結び目はずっとそのままにしておけるので、いちいち結ぶ必要はなくて、すっぽりかぶるだけ。長さの調節はその結び目でできるので、自在です。写真では結び目を後ろに回しています。


でも、今回はお勉強なので、今、日本で街中で出会う親子が、実際にどんなふうに抱っこして(されて)いるのかを体感するために、一般的に使われている抱っこひもをいろいろとつけてみたかったのです。


次々と試着してみて一番に思ったのは、
      今どきの抱っこひもを使うのはなんて面倒で疲れるんだろう
ということでした。
そうだとは思っていましたが、実際にやってみてくたびれるというのは、大事な経験でした。装具を点けたり外したり、赤ちゃんを入れたり出したりを繰り返しているとへとへとになるのです。

そして、
それなのにそういう抱っこひもを使うことが親子の体にとって楽だと信じ込んでいるお母さんやお父さんは大変だなあ、と思いました。

(がっちりした抱っこ紐は、赤ちゃんと親が協力して抱っこを成立させるものではないので、赤ちゃんの体重が増えていったとき、赤ちゃんの協力が得られないのです。赤ちゃんがそのように発達してくれないので、あとで大変になる可能性があります)
(新生児用のインサートなども開発されていますが、ダメなものにあとから何かをくっつけてよいものに修正しようとしても、なかなかうまくいきません。でも、インサートがあるから大丈夫、と思っている親が本当に多いです。解説書に大丈夫と書いてあるのですから・・・)
(一枚布は、最初慣れて覚えるまでは大変そうかもしれませんが、コツをつかめば、車の運転と同じで、慣れると身体が勝手に動くので楽になります。
そしてもちろん運転みたいに何十時間も練習する必要は全くありません)

いまどきの抱っこひもは、つけたり外したりがとても面倒なので、ばっちんパッチンと簡単そうに見える割に、一度抱っこしたらそのまま赤ちゃんを動かしたくなくなってしまいます。
そうしたら、赤ちゃんは、長時間、動作制限、行動制限されてしまって、
発達が阻害されかねない、と改めて思いました。

それに、もっと大事なことは、
薄い布一枚以上の装備では、赤ちゃんを直接感じられないということ。
赤ちゃんと親との皮膚接触は生物として愛着形成のためにも何よりも大事なのに、
カインゲンドンや薄いスリング以上の抱っこ紐をつけると、
・お互いのぬくもりが伝わらなくなったり、
・他者に触られた圧を感じて、自分の体の地図を作る時間を失ったり
してしまうのです
(同じ理由で、私は実はしっかりしたおくるみも抱っこ布団を使う抱っこも苦手です。素手の感触があってこそ、赤ちゃんとつながる(文字通りの愛着)が形成される感覚が持てるのです。きっと赤ちゃんもそうだと思います)。

    とても古い本ですが、親子の接触に関する基本書です。


私は、自分が(本来苦手なはずの)体操や、合気道(と鹿島神流)や、
竹内(敏晴先生の)レッスン、鍼灸指圧など、いろいろなレッスンを受ける中で、体の動き、呼吸法、歩き方、発声などを学んできたことが役に立っているのだろうなあと思います。若い頃は、まさか、そういうことが、子育てや孫育てに役立つだろうなどとは思いもしませんでした。そして、実はそれよりももっと前、子どもの頃に親に放っておかれて、勝手に遊んでいたことも身体感覚を作るためによかったのだろうなあと思います。身体を使って遊ぶ体験をしていないと、きっと子育てはもっと大変だったと思います。


さて、2日間終わってぐったりでした。
前半に学んだことは、ここにはほとんど書けませんでしたが、講演会を主催した子育ての文化研究所のウェブページを遡っていくと、テープ起こしの記録がありますので、関心のあるところをお読みくださるといいと思います。

さて、いわゆる子育て支援者、と言われる人たちでも、乳児のことを学んでいる人は多くはありません。でも、人間の発達で一番大事なのは生後一年間です。その期間の大切さを本当に知っている人が増えるといいなあと思っています。迫さんの持つ知見が、多くの人に伝わっていきますように。


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