ニュージーランドで総合診療科医、ライフコーチなどをしています。

私達が物事を経験する時、それぞれの人が自分のフィルターを通して経験します。
そのため同じ事を経験しても、人によって捉え方が違うのですが、ほとんどの場合は私達は自分のフィルターに気づいていません。

フィルターは今までの経験(文化、教育、人間関係)やその人の生まれ持った特性、性格などによって変わってきます。
異なるフィルターを通して、捉え方が異なると、それに続く気分や体の状態、行動にまで影響します。

例えば、子供を乗せて車を運転していたあなた。
後ろから警察の車がライトとサイレンをつけて近づいてくるのに気づきます。

あなた:
(スピード違反したかな。
いやいや、気をつけていたからそんなはずない。
何かの事件現場に駆けつけているのかなあ。
私の後ろで止まらずに追い越して行ってくれます様に。 )
ドキドキ。汗汗。

同じ車に乗っている子供:
「わー、警察のパトカー、かっこいいなあ。
僕も警察官になって悪い人を捕まえたいなあ。
もっと近くに来ないかなあ。」
ニコニコ、ワクワク。

起こっていることは同じ事でも、フィルターの異なる二人の人間にとっては
考えも、感情も、体に起こる変化も、全く異なります。

フィルターは一度作られたら、変わらない物ではありません。
違った経験を積んでいく事によって変わりますし、自分で無意識に瞬時に変えることもできます。

例えば。
あなたが道を誰かと話をしています。
急にあなたの背中に、誰かのバッグがぶつかってきました。

あなた:
(ちゃんと気をつけて歩いてほしいなあ。
もう少しで転びそうだったわ。)
腹立つー！心拍数上がるー！

「ちょっと、危ないなあ」と文句を言おうと振り返ったら
視覚障害者用の杖を持った高齢の人が、大きな買い物袋を肩からかけて転びそうになっていました。

あなたの気分や体の状態、行動はどう変わりますか。

多分、道をブロックしていて申し訳ない気持ち、相手が大丈夫か心配する気持ち、そう言うものが湧き上がってきて
「大丈夫ですか？」と優しい言葉を自然にかけ、助けようとしているでしょう。

客観的に見た状況には全く変わりがないのに、あなたの気持ち、考え、体の状態は一瞬にして変わり得るのです。

使うフィルターによって、気持ち、考え、体の状態が変わると言うことは
うまく使えば素晴らしく有用なのです。

フィルターがなければ、一瞬一瞬に入ってくる全ての情報を私達の脳は処理できません。
フィルターを通して、自分に必要な情報だけを選び取り、それを自分に馴染みのある解釈をし、色々考えたりしている訳です。
それが一番、時間的にもエネルギー的にも効率がいいのです。

ただお分かりの通り、自分のフィルターに固執するのは、危険性もあります。

他の人の見方、考え方が理解できず、
自分の考えとは違う、自分が理解し難い物事は(間違っている)と解釈しがちだからです。

この様な解釈の仕方は、私達の自己の成長の障害になる可能性がありますし、
他の人との人間関係とか、親として子育てにも有用でない影響を与える事があります。

私がコーチングのクライアントや患者さんと話をするときによく提案するのは
特に何かネガティヴな考えや気持ちが湧き上がってきた時に、
まずそれに気付くこと。

そして「自分はどんなフィルターを使っているか」、
「フィルターを変えたらどんな捉え方ができるか」
「相手の人は自分と違ったどんなフィルターを使っているんだろう」
と、少し止まって考えてみる事。

毎日、少しずつでも意識を向けて生きていくことで
私達自身に、見方の柔軟性が身についてきますし
それが私達の周りの人(子供も含め)に、ポジティブな影響を与えていく可能性大です。