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フンザの飲食店はなぜパッとしないのか!?


 のどかカフェを始める前、観光客としてフンザに来ていたときに感じたのは、どのレストランの食事も大しておいしくない、ということだった。どこの店に行っても、あるのはパキスタンカレーやビリヤニ(炊き込みご飯)がほとんどで、たまにフンザの地元料理のフレッシュチーズを挟んだチャパティや、ほうれん草のパスタ、クルミケーキなんかがあるくらい。食材としては、アンズやクルミやアーモンドのピュアオイルに加えて、各種ナッツ、干し果物、ヤクの肉、山羊のハードチーズ、鱒、モリーユキノコ、変わったハーブ等々、ほかの地域では見られないものが結構ある。にも関わらず、それを生かした料理というのは、レストランであまり食べることが出来ないのだ。さらに付言すれば、レストランでのスタッフのサービスもいまいち。すごいホスピタリティがあるわけでもなく、店内の内装に懲っているわけでもなく、清掃が行き届いているわけでもなく....。どのレストランも、景色は超一流なのだが。
 世界中から観光客が集まる土地でありながら、なぜこんなに食事が貧しいのか?ここでカフェを始めて分かったことの一つは、電気を得ることがとても大変だと言うことだ。電気は、しょっちゅう停電するし、発電機の音はうるさくてストレスだし、バッテリーは容量が不十分だったりすぐ調子が悪くなったりする。そんな状況だから、ほとんどの飲食店の冷蔵庫は、基本的に機能していない。そうすると、自然にメニューのラインナップは限られてきて、ある程度日持ちして作るのも簡単な粉物料理か、煮込み料理のカレー、という感じになるのも理解できる。お客の入りも、日によってまちまちの中、コンスタントに多種類の料理を提供できる体制を整えることは、冷蔵庫が機能しないこの土地においては大変に難しいのである。
 また、山が素晴らしすぎて、放っておいてもある程度、お客さんが来る、というのも理由の一つと思われる。そもそも、フンザの人は、あまりお金に興味が無い。みんな、畑や牧畜をするための土地を持っていて、庭には木の実や果物がたくさんなり、大家族で助け合っていて、買うべき物は大してないので、お金がそれほど必要ではないのだ。だから飲食店をしたとしても、ある程度のお客さんは来るのだから、稼ぎとしてはそれで十分。日本みたいにあくせく努力して少しでも売り上げを上げようという動機付けは、働かないのだろう。
 こんなフンザにいても、ぼくは日本人だから、やっぱりお金が欲しいし、少しでもよい食事、サービスを提供したい。そのために、我がのどかカフェも冷蔵庫が使えない中、あの手この手でおいしい料理を出そうと試行錯誤、奮闘している。その詳細はまた別記事で報告しよう。

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