深夜の緊急手術

事故を起こさないようスピードに気をつけました。慌てないつもりが、運転免許証を入れた財布を忘れたことを高速に乗る前に気づきました。
人間は慌てないようにと思っても、内心は慌てるものだとその時思いました。免許証を忘れたこともあり、慎重に運転しました。高速では夜景が綺麗でしたが、感傷にひたることなく、ただ何も考えずに病院をめざしました。
通常、病院に着くまで1時間以上かかりますが、ゆっくり走ったにも関わらず30分で到着しました。
夜間入口から入り、病棟で主治医から以下の説明を受けました。

・起きて欲しくなかった縫合不全の可能性あり。
・縫合不全となった場所から排泄物が腹膜に流れ、腹膜炎を発症した。
・これから開腹手術をして、洗浄ドレナージで体内をきれいにする。
・一時的にストーマをつけることになる。最低3ヶ月から6ヶ月の期間。
・最低でも2週間の入院が必要。

手術への同意サインを求められ、当然サインしました。手術は日付が変わる深夜0時からでした。しばらく待つと、ストレッチャーに乗せられた家内がやってきましたが、頭と手しか見えません。
縫合不全は大腸がんの手術では、合弁症として起きる可能性があるものと位置付けられています。結腸と呼ばれる直腸以外では確率は1〜2%ですが、直腸となると5%以上になります。確率は少なくとも、完全に防ぐことはできないらしいです。

待つこと2時間半、気を紛らわすように仕事しました。日付が変わった火曜、2時半過ぎに病院のPHSが鳴って手術の終わりの連絡を受けました。
主治医からの説明は以下でした。

・原因は想定通り縫合不全。
・20センチ以上開腹して、腹膜や体内に散らばった排泄物を10リットルの水で洗浄した。
・24時間以内に敗血症が起きないことを祈るのみ。

今後の見通しについては、現時点ではわからないとのこと。ひとまず家内の貴重品を持って帰宅し、病院からの電話でまた来てほしいとのことでした。
後から考えたら、なぜそのまま病院内に留まらせてくれなかったのかと思いましたが、この時期はコロナ禍だったので、家族といえども患者以外は病院内には留めておきたくなかったのでしょう。
病院を後にしたのは深夜3時過ぎ、トラックとタクシーしかいない高速を通って帰宅し、放っておいた牛丼を食べたのは4時でした。

あまりの出来事のため思考能力もなく、前夜からの緊張と疲れで身体が麻痺していたので、ひとまず仮眠しました。
家内の弟には前日中に連絡を入れており、朝にラインの着信に気づきました。折り返しで状況、といってもひとまず緊急手術が終わっただけで、先の見通しがさっぱりわからないことを伝えただけでした。
その後は、神経が昂っておりそのまま起きて病院からの連絡を待ちました。

昼前に病院から連絡があり、ICUから一般病棟に移ったと聞きました。続いて家内の貴重品を持って病院へ来るようにとのこと。まもなく家内から病院の電話を借りて連絡があり、声も大丈夫そうだったので、まずはほっとしました。

いつでも病院に行けるように準備していたので、すぐに向かいました。

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