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あにの 昆虫の話

 おとおとが節分で鬼役をやって次女を吐くほど泣かせている動画が永遠に面白いあにです。どうも。
 我が家の節分は外に向かって「おにはーそとー」とやるだけで今までやってきたのですが、流石に子供も小3と小5なのでいまさら鬼襲来型に変更してもこの楽しさは味わえないなぁと思うと残念でなりません。来年おとおと家に鬼役をかって出ようかしら。

 さて、あにはインディージョーンズシリーズが好きです。
 幼少の頃から金曜ロードショーを録画した最後の聖戦を何度繰り返して見たことでしょう。ショーンコネリーがやるお父さんがかっこいいんだ。ラストの誤った聖杯を使ってドノバンがミイラになるシーンになると、小さかったおとおとは隠れてしまい「もうおわった?こわいとこもうおわった?」と聞いてくるという大層可愛い子でした。それがいまではこんな……

 ちょっと前に公開された20年ぶりの最新作クリスタル・スカルの王国は、特に見に行く予定はなかったのですが、映画館の前を通った際についついフラフラと引き寄せられるように、気がつけば4番スクリーンの端っこに座っておりました。
 今調べてみたらもう15年以上前なんですってね! ビックリだ!

 で、そのクリスタル・スカルの王国の中に、軍隊アリが押し寄せる中でロシア兵と殴り合い、やられたロシア兵がアリに集られて巣に連れ込まれてしまうシーンがあります。

 あにのお気に入りのシーンですが、当時これを見たときはえも言われぬゾワゾワ感を感じました。
 常日頃より足が2本未満、もしくは5本以上ある動物は苦手だと公言しているあに。CGとはいえ6本足の生き物が画面を覆い尽くすしているせいか。ああ、映像からこんなに感情を動かされるなんて、私も感受性が豊かになったものだと思っていたのですが、しばらく考えるうちに、くっきりとした姿が浮かんできたわけではないけど、おぼろげながら浮かんできたんです。とある場面が。


 時は1980年代後半、世の中がバブル景気だなんだとまだまだ浮かれていた頃。
 兄弟の両親もおかげさまでバブルの恩恵にあずかっており、あに少年は小学2年生、おとおとは保育園の年中さんの時、初めての海外旅行に行くことになりました。夫婦揃って趣味であったスキューバダイビングを楽しむため、向かうは常夏の楽園、サイパン島。バブリー。
 もちろんまだ低学年のあに少年と保育園児のおとおとはボンベを背負ってスキューバなんてのは無理なわけで、陸上でお留守番です。今のコンプライアンスでは考えられませんね。よく何事もなかったものです。
 とはいえスイミングスクールに通っていたので泳ぎは十分に身についていた兄弟にとって、どこまでも続く白い砂浜と透き通る海があれば、親などおらずともいくらでも遊んでいることができます。ちょっとお腹が空けば、図書室にあったはだしのゲンで学んだ英会話(トーチャンカーチャンピカドンでハングリー)で現地人からチョコレートの一つもいただくのはわけありませんでした。

 事件が起こったのは、海に出る少し前。ダイビングショップで両親が機材を借りたり、ダイビング中の注意事項の説明などを受けている時でした。
 当然やることのない我々兄弟は、ショップの庭先(というか資材置き場になっているただの空き地)に放牧されていました。
 空のボンベや、車でボートを牽引するためのアタッチメントなど、日本ではちょっとでも触れば「あぶない!」とか「なにやってんだ!」とか怒られてしまうような物も、ここ自由の国アメリカでは触り放題遊び放題。あに少年は、あぶないんじゃないかと近寄らないおとおとを尻目に、乗ったり転がしたりして案外退屈せずにすんでいました。
 そんな折、少し離れて空き地の真ん中に佇んでいた、坊主頭で赤と白のウォーリーみたいなボーダーシャツを着たおとおとが、突如火の付いたように泣き叫び始めました。普段から泣き虫であった(ただあにによく泣かされていたとも言う)おとおとでしたが、日頃のベソっかきとは違うまさに泣き叫ぶという勢い。コンクリート打ちっぱなしのアメリカン建築な事務所から両親も飛び出してきます。
 なんだなんだと大人たちが集まる中、あに少年の目に映る、おとおとの体中に浮かぶ赤褐色の小さな斑点。しかもその斑点は足元から徐々に体中へと広がってゆく……

 赤蟻でした。
 おとおとが立っている位置の足元にちょうど蟻の巣があり、その出入り口を踏んづけてしまっていたもよう。怒った赤蟻たちが諸悪の根源であるおとおとを一斉に攻撃したんですね。
 持っていたウインドブレーカーでおとおとにたかった蟻をはたき落とす父。事務所の人が出してくれた謎の薬を塗ってやる母。蟻をはたき落としてなお噛まれたあとが赤い斑のおとおと。それらを呆然と見つめるあに少年は思いました。ああ、海外は、自然は、恐ろしいなぁ……と。

 以上、あにの昆虫の話でした。虫、こわいね!

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