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百人一首復習ノート:現代語訳、英訳、解釈とその感想(一一、一二)

復習ノートは、週一回くらい(週末だけ)にしておきたいところだけど、書きたいことが思いつかず、平日半ばに書くことに。まだ先が長いので、ゆるゆる続けていきたいところ。


普段、現代語で短歌を詠んでいるのであって、文語に親しみたいわけでも、文語で短歌を詠みたいわけでもない。けど、永く日本人の体に入ってきたリズムで、教養ある人が一度は親しんだ(無理やり覚えさせられた)歌に接することには、意味があることかもしれない。

教養としてではなく、自分の作歌の養分と作歌時のテクニックという実利を期待して、いまさらながら百人一首を復習してみようと思う。情報は、手元にあった百人一首の本三冊から(『百人一首がよくわかる(橋本治)』『英語で読む百人一首(ピーター・J・マクミラン)』『百人一首 (平凡社カラー新書)(馬場 あき子)』)。

noteで書くことに困った時にまとめようと思う。一つのnoteには、2首もしくは4首を取り上げたい。2首ずつ取り上げる理由は、百人一首が、二人ずつのペアが50組あるという作りだから。どうせなら、意味のあるペアの形でインプットしたい。それが連作を作るアイデアにもなるかもしれない。


一一.参議篁(さんぎたかむら)

わたの原 八十島かけて こぎ出でぬと
人には告げよ 海人のつり舟

(わたのはら やそじまかけて こぎいでぬと
 ひとにはつげよ あまのつりぶね)

現代語訳

海原を 島々めざして 出てったと
伝えてくれよ 海人の釣り舟

『百人一首がよくわかる』©2016 橋本治/講談社

英訳

Fishing boats upon the sea,
tell whoever asks
that I have sailed away
out past countless islets
to the vast ocean beyond.

『英語で読む百人一首』©2017 ピーター・J・マクミラン /文藝春秋

count・less /kάʊntləs(米国英語) 数え切れない、無数の
isletの複数形 /ˈaɪlɪts(米国英語) 小島
vast / vˈæst(米国英語), vάːst(英国英語) 広大な、広漠とした、莫大な、巨額の、非常な、多大の
be・yond / bɪ(j)άnd(米国英語), bɪ(j)ˈɔnd(英国英語) …の向こうに、…を越えて、…を過ぎて、…の範囲を越えて、…以上に、…よりほかは

解釈

小野篁は難波の港から瀬戸内海を経由して、日本海の隠岐島へとはるかな流刑の船出をしようとしていたのである。年齢はまだ若く三十七歳。
 (略)
 さかんな力を感じさせる気宇の大きい声調は、篁の高い気位と漢詩文に長けた才質を反映したものであろう。

『百人一首 (平凡社カラー新書)』©1978 馬場あき子/平凡社

感想

解釈を読んで、なるほど、と。漢詩文の要素があるから、読みやすいんだな。漢詩は好きだけれど、その勢いや語調を短歌に織り込もうなんて思ったことがない。篁本人も織り込もうと思って詠んだわけではないだろうけど。好きな漢詩が体に入ってくれば、こういう歌が詠めたりするだろうか。

一二.僧正遍昭(そうじょうへんじょう)

天つ風 雲のかよひ路 ふきとぢよ
乙女の姿 しばしとどめむ

(あまつかぜ くものかよいじ ふきとじよ
 おとめのすがた しばしとどめん)

現代語訳

空の風 雲の行く道 とめちゃいな
天津乙女(あまつおとめ)を もっと見てたい

『百人一首がよくわかる』©2016 橋本治/講談社

英訳

Breezes of Heaven, blow closed
the pathway through the clouds
to keep a little longer
these heavenly dancers
from returning home.

『英語で読む百人一首』©2017 ピーター・J・マクミラン /文藝春秋

breezeの三人称単数現在。breezeの複数形 /ˈbrizɪz(米国英語), ˈbri:zɪz(英国英語)/ 微風、 そよ風
páth・wày / ˈpæˌθwe(米国英語), ˈpæˌθweɪ(英国英語) 小道、細道

解釈

 羽衣伝説のような場面を思わせるこの一首は、豊明節会(とよのあかりのせちえ)に五節(ごせち)の舞姫の退下(たいげ)するのを見送るほめ歌である。陰暦十一月の丑の日より四日にわたって催されたこの節会の舞姫は五人、公卿・国司の娘より選ばれ、衣装比べ、趣向比べの観がある、みもののの宮廷行事であった。

『百人一首 (平凡社カラー新書)』©1978 馬場あき子/平凡社

つまりこの和歌は、舞を終わって退場していく五節の舞姫達に向かって、「もうちょっと見てたいから行かないでくれ」と頼んでいる和歌なのです。
 (略)
僧正遍昭は「六歌仙」の一人ですが、この歌は出家する以前、彼が良岑宗貞(よしみねのむねさだ)と名乗っていた頃の作品ですから、どうぞご心配なく。

『百人一首がよくわかる』©2016 橋本治/講談社

感想

ストレートに留めてほしい、という風に言っちゃってるけど、もうこの歌があるので、同じように、留めたいシーンがあっても、「しばしとどめむ」って技が使いにくい。「しばしとどめん」って本歌取りしてる歌多そう。これも英訳読んで、意味がわかる感じ。

※引用図書の紹介

『百人一首がよくわかる』

国語の教科書にあるような、文法的に正しい訳ではなく、短歌の長さ程度の軽妙な日本語訳と、短い解説書。

『英語で読む百人一首』

百人一首の英訳。古語や現代語訳より、歌の情景が浮かぶものも多い。

『百人一首 (平凡社カラー新書)』

馬場あき子先生の著作。ただし、教養としての解説であって、歌の解釈は短め。

いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。