百人一首復習ノート:現代語訳、英訳、解釈とその感想(七、八)
普段、現代語で短歌を詠んでいるのであって、文語に親しみたいわけでも、文語で短歌を詠みたいわけでもない。けど、永く日本人の体に入ってきたリズムで、教養ある人が一度は親しんだ(無理やり覚えさせられた)歌に接することには、意味があることかもしれない。
教養としてではなく、自分の作歌の養分と作歌時のテクニックという実利を期待して、いまさらながら百人一首を復習してみようと思う。情報は、手元にあった百人一首の本三冊から(『百人一首がよくわかる(橋本治)』『英語で読む百人一首(ピーター・J・マクミラン)』『百人一首 (平凡社カラー新書)(馬場 あき子)』)。
noteで書くことに困った時にまとめようと思う。一つのnoteには、2首もしくは4首を取り上げたい。2首ずつ取り上げる理由は、百人一首が、二人ずつのペアが50組あるという作りだから。どうせなら、意味のあるペアの形でインプットしたい。それが連作を作るアイデアにもなるかもしれない。
七.阿倍仲麿(あべのなかまろ)
天の原 ふりさけ見れば 春日なる
三笠の山に 出でし月かも
(あまのはら ふりさけみれば かすがなる
みかさのやまに いでしつきかも)
現代語訳
英訳
gaze / géɪz(米国英語), geɪz(英国英語) (熱心にじっと)見つめる、熟視する
解釈
感想
帰ってこれなかった阿倍仲麿が、中国から、奈良の都の月を詠むというのは、なんとも胸が締め付けられるよう。英訳は「空を見上げると、昔、春日の三笠山を照らしていた月だろうか?」といった意味。橋本治さんの日本語訳より、しっかりと意味をはっきりとさせている。英訳に助けられるなぁ。同じ空の下、遠くの、故郷の、何かを詠むというのは、人の気持ちを揺さぶるのかもしれない。
八.喜撰法師(きせんほうし)
わが庵は 都のたつみ しかぞ住む
世をうぢ山と 人はいふなり
(わがいおは みやこのたつみ しかぞすむ
よをうじやまと ひとはいうなり)
現代語訳
英訳
hut / hˈʌt(米国英語) (掘っ建て)小屋、あばら屋、(山の)ヒュッテ、仮兵舎
fled / fléd(米国英語), fled(英国英語) fleeの過去形・過去分詞
flee 逃げる、逃走する、逃れる、逃れ去る、(危険を避けて)逃げる、避難する、消えうせる、急速に過ぎていく、速く経過する
sorrows / ˈsɑroz(米国英語), ˈsɑ:rəʊz(英国英語) sorrowの三人称単数現在。sorrowの複数形。悲しみ、 悲哀、 悲痛、 悲嘆
sor・row / sάroʊ(米国英語), sˈɔːr‐(英国英語)/
解釈
感想
笑いやしゃれに寄せていったような歌。深刻な歌、悲哀を感じされる歌ばかりじゃ疲れるだろうから、こういう歌も間に挟みたいし、たまに詠めるとよさそう。前の帰国が叶わなかった阿倍仲麿の歌があるので、ちょっと気分を変えるのにもよかったのかもしれない。英訳、憂しをsorrowとしたわけね、なるほど。
※引用図書の紹介
『百人一首がよくわかる』
国語の教科書にあるような、文法的に正しい訳ではなく、短歌の長さ程度の軽妙な日本語訳と、短い解説書。
『英語で読む百人一首』
百人一首の英訳。古語や現代語訳より、歌の情景が浮かぶものも多い。
『百人一首 (平凡社カラー新書)』
馬場あき子先生の著作。ただし、教養としての解説であって、歌の解釈は短め。
いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。