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「戦場のピアニスト」を観ました。

第二次世界大戦下のポーランドのピアニストの実話を描いた作品。

日本公開時にテレビでピーコさんの解説を見て、「なんて悲しくてつらい話なんだろう」というインパクトが強く、これまで気になりつつも見られなかった。しかし今回、Netflixで「6月30日配信終了」という文字を見て、意を決して観ることに。

物語は1939年のポーランドで始まる。ナチスドイツの侵攻により、ユダヤ人はレストランや公園での行動を制限される。さらにはゲットー居住区に押し込められ、そしてついに強制収容所へ輸送されていく。
主人公のピアニスト・シュピルマンは、仲間の機転もあり強制収容所への連行は免れ、ゲットー内での肉体労働に従事することになる。

物語はシュピルマンの視点で描かれるため、強制収容所の描写はない。なので「シンドラーのリスト」のような恐ろしさはないかというとそんなことはなく、ゲットー内も地獄のような恐怖に支配されていた。そしてシュピルマンの愛する家族は、強制収容所行きの家畜用列車に乗せられるシーンが最後となる。ここだけ切り取っても実につらい。

シンドラーのリスト、アンネの日記、そしてこの戦場のピアニストに共通するのは、ドイツ人協力者の存在があること。彼ら協力者にとっても命がけの日々だったのだと考えさせられる。

シュピルマンはいつ死んでもおかしくないような状況のなか、潜伏生活と逃亡を繰り返すが、あるとき、廃墟となった建物の中でひとりのドイツ人将校と遭遇する。このシーンが物語のハイライトであるが、印象的だったのはその少し前のシーン。ある夜、廃墟でシュピルマンが耳を澄ますと、ベートーベンの月光が聞こえてくるシーンがある。この演奏者については明らかにされていないが、状況からしてこのドイツ人将校が弾いていたのだろう。出会った時代と立場により、二人は敵同士であったが、戦争でなければこの出会いはどうだったろう。ピアノを、音楽を愛するもの同士、生涯の友になり得たのではないか。シュピルマンの演奏を聴くドイツ人将校の目には、驚きと共に彼に対する敬意と賛美が間違いなくこめられており、それゆえこの戦争の罪深さを呪わずにはいられなかった。

ちなみにこのドイツ人将校を演じたトーマス・クレッチマンは、韓国映画「タクシー運転手ー約束は海を越えて」にドイツ人ジャーナリスト役で出演。こちらも気になっていた作品なので、近いうちに観たいと思います。

おしまい

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