見出し画像

いのりまち町民集会2024 -ACOUSTIC LIVE Wonder Caravan!-滋賀公演感想

水瀬いのりさんの町民集会(年1開催のファンクラブイベント)滋賀公演に参加した。今回はアコースティックツアーと銘打たれた企画、会場となったのは関西方面ではびわ湖ホールである。

ロケーション、音響…正直1番今回のツアーで行きたかった会場のチケットを手にしてワクワク気分で車をぶっ飛ばした。三連休で渋滞する国道を水瀬いのりさん全曲をシャッフル再生で駆けつけた次第である。

結論から言えば、こんな企画は「絶対良いに決まってる」とわかっていた。ある程度の想像がつく。慣れ親しんだ曲のアコースティックライブと言うのは特別…言わばいつも教室で会う制服の君しか知らないのに「あれ?なんかいつもと今日違うね?」って空気が漂ってる。普段よりさらに魅力的と言うか、もうズルいのである。

だがしかし、そう言った想像を簡単に超えていくのがやはり水瀬いのりさんと言う存在である。

キモイですよね。いのりさんは「私はみんなと同じ、普通の人なんだよ」って再三申し上げていて神格化されるのを嫌がってるのに。
でもさ、普通の人とはやっぱり思えない。究極の普通かもしれない。普通って人の数だけあるし定義も自由だから難しい。それを何度でも更新していくのが水瀬いのりさんであり、特にここ数年の姿勢に我々は恋心を超えた何かを抱くのかもしれない。だから惹かれてしまう。
そんなわけでね、もう本当に天井知らずと書いて水瀬いのりと読ませるかのようなライブでした。忘れないうちに記録に残しておこうと思います。と言うかマジでこの人の才能に気づけて追いかけられたこと、今も追いかけられていることを誇りに思う。


ステージセットやBGMが作る心地良い環境

入場。大ホールに足を運んでみるとまず見えてきたのは、ステージ中心に建てられたタープの存在である。主にキャンプなどで使用するアイテムであるが、テントと同様に「ここは私の家であり居場所なんだ」と存在する意味合いが強いと僕は思っている。夏の強い日差し、降り注ぐ雨、そう言った自然の摂理から身を守る役目もタープにはある。つまりは、「安全で過ごしやすい環境を今日も作っていくよ」と言う水瀬いのりさんからのメッセージを感じられた。視界を広げるとタープを中心に端までランタンがいくつも灯っている。木製のイス、森のセット、そして楽器が配置されている。背景には天体観測でも出来そうな夜空が広がる。

この風景をさらに色彩豊かに彩るのが、無印良品のようなBGMである。所謂ゆるキャンぽい、あるいはケルト音楽と呼んで良いと思う。それもワンパターンではなく、かなり色んな曲調が用意されていたので「もう少し早く入場しておけば…」と若干後悔した。エアギター、エアドラムごっこが捗り未だ何も始まってないのに身体が動いてしまう。もうなんて言うか私的な好みだけで申し上げれば「俺の好きな雰囲気!!好き!!!」と言う気持ちになってしまった。あかんもう楽しいぞこれ。

想像を超える音楽、新しい環境と水瀬いのり

BGMが途切れることなく徐々に会場が暗くなりバンドメンバーが入ってきた。静かに確実に音を鳴らしていくと、びわ湖ホールの壁にそれが跳ね返った。素人の耳で聞いても素晴らしい反響が広がっているのがわかる。音に酔いしれる程度の時間があった後に本日の主役、水瀬いのりさんが登壇した。ポニーテールを作り上げ、町娘Aみたいな赤と白を基調にした衣装を着ている。

ツアータイトルとなった“Wonder Caravan!”から幕を開ける。うん、いつもの水瀬いのりさんである。何も変わらない。昨年のツアーの歌い方とはまた少し違う気がするが何も変わらない。この人の核、歌の主軸はしっかりしている。
元々アコースティックライブ向けの楽曲ではあるが細かい所を聞いていくとアレンジが勿論変更されている。この辺りは配信で再確認したい

バンドマスターのミッチーさんは今回はウッドベースを華麗に操っている。このステージのもう1人の王たる風格を今日も放つ。じっじーさんは今日も顔もギターもセクシーで優しくて強い。おばちゃんはいつもと同じ丸いメガネが可愛らしくて同じキーボードだったかな(?)。
新メンバーにはドラム+パーカッションの若森さちこさん。石原夏織ライブのアコースティックパートにも出演されていたので見るのは2度目である。「海外で手に入れた」と言う無数の鍵がぶら下げられた謎の楽器を今回も持ち込み、気さくなキャラクターとプレイで聴衆の心を掴む。
もう1人、こちらも新メンバーとしてヴァイオリンに須磨和声さんが加入している。Wikipediaを読むと、のだめカンタービレとか文字が並んでるし多分すげえ人である。話すのは苦手そうだが言葉よりも音を追うタイプのプレイヤーであることがトークなどから判明したので親近感を得られた。と言うかアコースティックライブとは言えヴァイオリンまで呼ぶパターンは少し珍しい気がする。彼の音、その存在が可能にした場面は今回かなり多かったので感謝です。

そして、このバンドと水瀬いのりさんの歌声を受け止めるのが我々町民とびわ湖ホールと言う構図である。繰り返すが素人耳で聞いてもこのハコは音が良すぎる。バンドの音は勿論、水瀬いのりさんが話す声、拍手の音さえも格式高い響きを持っている。

“水瀬いのりさんがアコースティックライブをする”と言う知らせが届いた時に想像した音像や空気感を、この会場はどこまでも増幅していく。何度も想像したそれは、開始数秒で想像を超える現実として目の前で展開される。気づくと体が少しだけ震えながら泣いてる。僕はすぐ泣くのであるが、それが2曲“春空”でも止まらない異常事態であった。初体験かもしれない。冬にアコースティックライブやるのにタオルは要らんだろと思っていたが持ってきていて良かった。いや泣いちゃうでしょそんなの。
“春空”は、僕が水瀬いのりさんを正確に認識した初めての楽曲である。名盤innocent flowerの1曲目に収録されたそれは、挨拶代わりに“夢のつぼみ”を開花させながら以降の水瀬いのりワールドに僕を引き込んで行った。そんな始まりの日をまた思い出したのである。色々あったな。

いつもためらう道 一歩踏み出してみよう
自分のペースでいいから 新たな季節を感じて
今は知らない景色 いつかこの目で見たい

あの時は知らなかった景色が彼女の目の前に、そして僕らの前に広がっているんだな…また新しい季節に僕らは辿り着いたんだなと言う気持ちが込み上げて溢れる。彼女の才能を目の当たりにした春の日を遠くに感じる。しかし、何度でも春は来て僕らに問う。

「君は君のアイデンティティや価値観を更新し、君の中の“普通”を塗り替えられているのか?それを可能にする環境にいるか?」と、空や風、陽の光は問う。つまりは、更新され続ける水瀬いのりさんと言う存在の更なるアップデートの為にこのアコースティックライブと言う場所が存在し、それが彼女をまた2段階くらい魅力的に見せる環境音楽(本来の環境音楽が示すジャンルとは違うが)として機能している…と言う仮説が生まれるのではないだろうか?僕にはそのように映った。

2022年にglowで彼女が獲得した新しい表現や覚悟、これはしばらく変わることのないスタイルになっていくと確信していたが…実際には翌年のアイオライト、スクラップアート、これに伴うツアーの中で更なる変化を遂げたように僕は感じた。ラジオの公録でもファンとこれまで以上に密なコミュニケーションを取っていく彼女の姿を見て「あっまた変わった。いつもと変わらないけど変わった」と感じた。そして今、水瀬いのりさんは次の新しい季節を迎えている。これを大勢のファンが好意的に解釈できると言う現状、非常に幸せなことである。しあわせいのりまちだろこれ…

閑話休題、3曲目“ハートノイロ”に記憶を戻していく。好きすぎる曲で無理になっちゃった…なんなら当日水瀬いのりさんに送った手紙に「最近の曲も好きだけどハートノイロとDreamin girlsもまた聴きたいです!」とか書いちゃったよ俺ごめん。古参泣かせすぎるし疾走感はあるが音の抑揚がわかりやすい曲調がアコースティックに非常に合う。かつてのMr.Childrenがメジャーシーンで見せる特大ポップスを、あえてホールサイズのハコで演奏するような距離感やダイナミズムを感じられた。実際にミスチルも最近はホール規模のツアーを数回展開していて、双方のファンである僕としてはニヤニヤした限りである。

この後がMCだったと記憶しているが間違ってたらごめん。軽い挨拶とバンドメンバー紹介があったと思う。音を出しながら紹介するパターンではなく、今一度いのりさんとメンバーがコミュニケーションを重ねる。それにしても初めて町民集会に来た人が多いなと感じた(いのりさんからの問いかけに手を挙げてくれた人の数を見て)。本当に最近若いファンが増えて、それでもって昔より全然マナーが良いから逆にこちらが学ぶ場面も多い。今後も勉強させて頂く。

続いて演奏された“アイマイモコ”、代表曲のひとつでありながらここ数年はライブに行けば必ず聴ける曲でもない気がする。初めて聴いた町民も沢山いたのではないだろうか?声の出し方が聞くたびに変わるなあと言う印象。昔はもっとキツそうだったのに今はどんどん伸びやかになっている。そう言うのを見てるだけで涙腺もう緩んでしまうので歳かもしれない。実際にミッチーさんもその後のトークパートで「glowツアーあたりから声がもっと出るようになった」みたいなことを言って褒めていたので、プロから見ても成長を感じられるレベルなのであろう。

照明が紫に変わりながら“Melty Night”へ。アコースティックライブにおいてジャズ的なアプローチが用意されることは予想していたので嬉しい。序盤は立ちながら、2番から木製のイスに座りながら歌うと言う流れだったと思う。ウッドベースやピアノの響きが一層鮮明に、びわ湖ホールをムーディーに彩っていく。

ここでトークパートだったかな?普段とは違うアコースティックライブに向けてどんな向き合い方をしたか、バンドメンバーやいのりさんがどんな風に普段音楽を聴いているか…と言う話が中心だったと記憶している。ライブ+クリエイタートークを見るような満足感があったので今後も続けて欲しい。

バンドサウンドの分解と証明

この後、事前に募集していたと言うか所謂人気曲投票第1位の結果が報告され“三月と群青”が披露された。原曲はボカロ文化+四つ打ち邦楽ロックをベースにしたような楽曲で、叶わないかもしれない恋の行き先を吐露する歌である。メッセージ性はもちろん変わらないが音の出し方に大きな工夫が施された。最初から最後までヴァイオリンとピアノしか鳴らなかったのである。何というドラマチック、しかもイントロにはクラシック定番曲であるカノンを引用することでマッシュアップのような手法を取り入れた点には驚いた。アコースティックライブと言えばバンド全員で音を鳴らすことを基本としているが、こう言う見せ方は珍しい気がする。

立て続けに演奏された“HELLO HORIZON”、これもまた息を呑むと言うか本日のピーク的な盛り上がりが存在した。赤色の照明がじっじーさんに当たり、ラテンのようなイントロ(絶対どこかで聴いたことあるんだけどわからんかったごめん)から繋ぐ…と言う“三月と群青”と同じ手法を違うカラーリングで見せてくれた。何処からかフルバンド演奏になったが、アコギVS水瀬いのりのバトルも見応えがあった。掻き鳴らされるアコギ、美しくも乱打されるピアノ、それを追うボンゴ?などの打楽器とウッドベース、その全てをまとめ上げて世界を構築するヴァイオリン…これに全く負ける気がない水瀬いのりさんのボーカルは今日もまた新しいアイデンティティを獲得している。相も変わらず一筋の光を穴に通すような繊細さを持ちながら美しく強い。圧巻である。上手く言えないが声やブレスの強弱、抜き方が絶妙であった。水樹奈々さんの“残光のガイア”に近いと言えば同世代の人はわかってくれるかも、だがもう少し大人しい。音が鳴り止んだ時の静寂も格別であった。凄すぎてまた泣いてしまう。すごいぞ水瀬いのりさん…!!

この2曲で行われたのは、つまりバンドの分解である。水瀬いのりさんを新しい場所に導くアコースティックいのりバンドと言う環境、そのひとつひとつの音がどんな風になっているのか?ひとつずつ鳴らせば誰にでも理解することができる。「全部鳴った時に何故こんなにも魅力的なのか?」という命題に対して証明を記述していくような解答である。そして結果的にひとりひとりのバンドメンバーにも改めてスポットライトが当たる…これ考えた人めちゃくちゃ粋です。素晴らしい。

軽いトークの後(ごめん覚えてない)に“ココロソマリ”が披露されたと思う。原曲も大好きなのだがアコースティックになったことで、さらに優しい印象を与えてくれるし声の輪郭がハッキリした。ラスサビの雪崩のような歌唱には素直に「上手い…」と口から漏れてしまう。ほんま好き。

ここから“アルペジオ”へ。これもまた人気曲のはず、今回の選曲はド真ん中で本当に気持ちが良い。打ち込み系の曲をアコースティック主体の生音に変換するタイプが大好物なので非常に楽しめた。不特定多数が鳴らすクラップは基本的に苦手なのだが、この曲に限ってはいつも楽しみである。原曲は七夕や宇宙を遊覧するイメージが強いが、アコースティックのふわっとした香りが舞い込んだことで更に浮遊感が強くなった。

進化し続ける水瀬いのりと共に幸せを掴む

ライブも終盤(本当に早すぎて草)、最終楽曲はいのりまちの繋がりを改めて感じさせる“harmony ribbon”で締め括られた。どこまでも伸びる美声に寄り添うバンドの音、会場中に響き渡るラララ♪の大合唱…過去と今、そして未来が繋がる。5列目だったからよく見えたのか気のせいか、いのりさんが泣きそうな顔をしてるように見えた。僕?僕はもう既に泣いてる無理。

アンコール、グッズのパーカーにロングスカート、黄色いバンダナをポニテに巻きつけたいのりさんが現れる。「みんながこんなにキラキラしていたら私も負けてられないなと思いました」と話していた。キラキラしてるのは貴方なんですよ…俺は、俺は…別に。でも年明けくらいから生活や部屋の改善とかして頑張ってますよ。毎日弁当作ってるし筋トレも続いてるし…少しずつ俺もそうやって自分の環境とアイデンティティを更新していくよ。いいライブ見たから絶対明日が良くなるなんて思えないけど、変な勘違いのまましばらく何か続けていきたい。その力は再び受け取りました。ありがとうございます。

「この曲を最後にやるのは皆さんにとっても大きな意味があるんじゃないかな」みたいな話をしながら何が来るんだろう?とワクワクしていると“lucky clover”が演奏された。しあわせいのりまちだろこれ…披露自体も久々だったので感極まる。アコースティックによって新しい魅力を手に入れたその楽曲が我々の2024年に無限の四つ葉を舞い散らせた。なんかよくわかんねえけど、もう大丈夫な気がした。

世の中も僕も君も変わり続けていくだろう。それに対応できるような環境を手に入れるのは並大抵のことではない。自分が変わる必要を迫られる時も来るだろう。変わらないと言う選択肢、良さもきっとある。そんな時に水瀬いのりさんを追い続け、「この人をもっと理解したい」と強く願い行動できる可能性を持った僕達は…きっとこの先も堂々と生きていけるはずだ。

進化し続ける水瀬いのりさん、今ここでわかった気になっても次のフェイズが用意されているだろう。だがここまでを理解したことは無駄にはならない。引き続きその動向を追いながら今日もまた幸せに生きていきたい。

俺は今、水瀬いのりを誰よりも楽しんでいる。
…君は!?



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?