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在外邦人の日本サゲについて

タイトルの通りではあるが、以前、在外邦人の日本サゲがダルかったという旨のTweetをしたら、国を問わず、在外邦人の方から共感いただいたことがある。

どうやら、界隈ではこういう輩(日本サゲをする人)のことを祟り神と言うらしい。言い得て妙。

しかしよく考えてみると、生きにくさは日本や海外でそう変わるとは思えない。自分の置かれた立場や環境––例え働いている会社が異なるだけでも、悩みなんて人それぞれ異なる。異国であるならその違いはさらに顕著だろう。
ではなぜ、定期的に「日本が生きづらい」と感じる人が出てくるのだろうか。

私なりに考えた結果、「人生は運ゲーに他ならない」という結論に至った。だから、いま日本で生きづらいと感じている人に対して、感情論で批判したり、反対に、手放しに同調するのも本質的ではない、ということを言いたい。以下、そのように考えた理由。

前提として、私は同じ在外邦人として、日本が特に生きづらいと感じていないという立場(「日本=生きづらい」論に懐疑的な立場)を取っている。

説1 悩みのベクトルが違うのではないか

冒頭で述べたように、人は自分の置かれた立場や環境によって、悩みは異なる。その点に鑑みると、多くの日本人にとって、日本で住むのはイージーモードだ。役所や病院、ちょっとした小旅行。どこへ行くのにも、勝手知ったる言語と文化に対し大した不安もない。

一方、海外ではそうもいかない。来たばかりであれば、カフェでオーダーしたり、荷物を受け取るのさえ一苦労することもあるかもしれない。「住みにくい」故に、「生きづらさ」を感じる余裕なんてないのだ。

マズローの欲求5段階説に描かれるピラミッドみたいなもので(あの説が正しいかどうかは別として)、生きる上での悩みがなければ、自己実現や、より生活の質向上に関連する悩みが頭角を表す(生きづらさに思考がフォーカスしてくる)のは自然なことのような気がする。
海外での生活が長い人が、住んでいる国での「生きづらさ」を言語化できるのではないかと思う。

説2 コミュニティが異なる

自分でコミュニティを選べない/選びにくい未成年や新社会人ではないのに、--例えば30代以降の人で、日本での生きづらさを唱えている人は、選ぶコミュニティを変えるべきだ。

もちろん、コミュニティ云々に関わらず、出る杭が打たれる、といった日本全体の風土が合わない人もいるだろう。

あるいは、痴漢大国と言われるような社会問題的な部分を指して、生きづらいと言っている人もいるだろう。その点に関して言えば、問題を許す風土なんてあってはならないし、第一に悪とすべきは加害者や加害者を許す風土であることは言わずもがなである。

こうした問題が何よりも大事で、日本に生きづらさを感じていると言うならば、それはその人の生きづらさなのだから、何も批判する謂れはない。どの国にも問題はあるにせよ、どういった種類の問題が生理的に受け付けないかというのは人によって異なるし、そこに(海外の方が治安が悪い)といった反論をするのは間違っていると思う。

ただ、多くの人は、普段生活している中で、自分の半径10メートルくらいの人が好きな人たちであれば、あまり生きづらさというものは感じないように思う。私には友人が少ないが、その数少ない友人関係が心地良い物だからこそ、20代後半くらいから、日本で生きづらいと感じたことはない。いや、むしろ自分を生きづらくする人との関係を絶った、という方が正しいだろう。

自分で人間関係を選ぶには、選ぶだけでなく捨てることも重要だ。それをしなければ、嫌な人間とずるずるつき合わなければなるまい。しかし捨てるには、コイツがいなくても大したことない、という自負が必要だ。
例えていうなら、女が心を寄せている男が、会うたびに身体だけを求められている状態と似ている。「私を大事にしてくれないなら、こんな男いらん」とならなければならんのだ。

自分でコミュニティを選べる人ばかりではない

ここで、冒頭で述べた結論に戻るのだが、全ての人が自分でコミュニティを選べるわけではない。閉鎖的な地方で苦しんだ人もいるかもしれないし、毒親で苦しんできた人、あるいは今働いている会社を辞めるに辞められない事情がある人もいるかもしれない。夫の転勤について行き、住んでいるところでは実質母一人子一人、という人だって考えられる。

特に、自分でコミュニティを選べない/選びにくい未成年に、「あなたが生きづらいのは良い友人関係を築けていないからだ」というのはあまりにも酷だろう。

何かに依存しなければならない人間関係は問題になり得るが、そのような正義を振りかざしても、「社会」は幸せになれない。
人によってさまざまの境遇があるからこそ、想像力を働かせて、人に寄り添えるようになりたいと思った。



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