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Vol.81 保険代理店ビジネス

を何年も前からウォッチしています。

と言っても、よくショッピングセンターで見かける「ほけんの○○」みたいな

生保を中心に複数社をラインナップする乗合代理店ではなく

一社の損害保険を中心に取り扱う専属代理店の動向です。

長らく規制に縛られ、或いは守られてきた保険業界ですが

一口に代理店と言っても、前者と後者ではだいぶ景色が異なります。

前者は、全国にショップを構えるような規模感の会社が凌ぎを削り

厳しい競争環境における淘汰を経て

数年前にはある程度、有力なプレーヤーが出揃った感があるのに対し

後者は、保険会社に忠誠を誓う代わりに

ある程度、その保険会社に優遇されてきた部分があり

長く続く零細の個人商店が、今でも数多く全国に存在しています。


しかしながら時代は変わりました。


まず、保険会社。

皆さんも何かしらの生損保に加入していると思いますが

このように日本は既に成熟市場、かつ人口減と高齢化に直面しています。

それからテクノロジーの進化。

例えば損害保険の代表的な商品の1つ、自動車保険にしても

そもそも自動車に乗る若者が減ってきている世の中で

サブスクやライドシェアのように、所有から利用へと人々の価値観も変化してきています。

このような環境において、全国に支社や代理店を多数抱える保険会社は

その統廃合を進め、国内事業の効率化を目指すでしょう。

他方、ビーチで各社の「Vol.79 中期経営計画」を読み込んでいて感心したのは

大手を中心に豊富な資金力を使って海外の成長市場で積極的にM&Aを仕掛け

グローバルな存在感を増していたり

ビッグデータ解析で新たな分野を開拓して成長戦略を描く会社もあります。

この視点は流石の一言で、もはや同業の大手競合を意識していると言うよりも

デジタル革命への挑戦と捉えた方が適切です。


では、そのデジタル革命の寵児から事象を眺めてみるとどうか?

例えばオンラインショッピングやデジタルバンキング、

ライドシェアやフードデリバリーを提供するプラットフォーマーにとって

保険は、商機をもたらしユーザーを囲い込む追加のコンテンツです。

あるいは、インシュアテックと言って

保険とテクノロジーを組み合わせて、全く新たな発想で

コンテンツを設計するプレイヤーが、グローバルに沢山登場しています。

一例を挙げると、私のようなノマドの人向けの保険なんかもあります。

保険会社にとって彼らの存在は、既存テリトリーを脅かす脅威とも言えるし

見方を変えれば、タッグを組んで新たな価値を提供するチャンスともなり

流通チャネルを分散する上でも有効です。


このように業界の大前提が大きく変わりゆく中にあっても多くの代理店の腰は重く

日本の高度成長期に創業した世代はそろそろ事業承継に直面、

大きな成長を見込む絵を描けず売上も右肩下がりで

保険会社に言われるままに数字集めで、旧知の代理店とくっついてみるも

1つの会社を共同運営するとなると様々なしがらみが表面化して結局上手くいかない、

そんな繰り返しを地域単位でやっているのが実情でしょう。


これは率直に言って、大きなビジネスチャンスです。


実際、若い世代にバトンタッチして成長意欲のある代理店は

保険会社と二人三脚で規模の拡大を図っています。

少なくとも支社と代理店の統廃合、と言う名目において両者のベクトルは一致しているのです。


ただ、ここで1つ見落としがちな点があります。


成熟市場において代理店の数が多過ぎるから効率化のため集約する

簡単に言えばこう言うロジックですが、これまでの説明通り

“専属”外の世界で、淘汰が進んでいるばかりか

“業界”外の世界から、テクノロジー企業が新たな発想で領域を侵食してきています。

どちらかと言うと今、世の中で起こっている変化は

スマホの普及で、田舎でも公共交通機関に乗ればピッと決済できて

わざわざ隣町の銀行窓口まで行かなくてもオンラインバンキングか

せいぜい近くのコンビニまで行けば、大抵の用事は済むようになった利便性の提供です。

*参考までに、銀行のこれからについては「Vol75. BaaS」で取り上げています。


デジタルに設計して過疎の課題解決に取り組む時代に

中央集権的な発想でいたずらにサイズばかり追いかけて

事業運営が非効率になってしまうと

何より事業者にとって(成熟市場なだけに)継続が大変になってしまうし

コロナとの共存にもマッチしないアイデアです。


詰まるところ、保険会社への過度な依存体質を改めて

代理店自ら変革していけるしなやかさが問われるタイミングに来ているのです。

例えば私だったら、地域リスクを分散することに始まりエクイティファイナンス、

専門人材含む外部の視点を積極的に取り入れるガバナンス構築、

あるいはデジタルを駆使して傘下入りした各拠点を有機的に繋ぐなどして

要は各個人商店が自ら参加したくなるような、フラットなプラットフォームづくりを目指しますが

これらを取り入れている代理店が一体どの程度あるか?


また、エクイティファイナンスに関係ありそうなところでは

金融界のルール整備も色々進んでいて、改正銀行法や金融サービス仲介業の仕組みがスタートしています。

**この辺りについて詳しくは、また機を改めて書いてみます。

実は乗合代理店の世界では、保険会社が何十億も出して代理店を買う事例が既に起きていますが

恐らく専属代理店においても、地域を担う成長株の代理店(を営む会社)に

保険会社やそれこそ地域創生を目指す金融機関が出資するケースが出てきても不思議ではありません。


従って(至極、当たり前の話なのですが)資本サイドは投資収益性を

経営サイドは、参画を希望する事業者や投資家の方から自ら声をかけたくなるような

ユニークな価値提案を意識する。

これらは、専属代理店にもこれから求められてくる姿勢でしょう。

保険セールスのプロが

必ずしもこれら様々な要素に精通しているとは限らないでしょうから

大きなチャレンジかも知れませんが、千載一遇のチャンス!でもあります。

さて、志を持ったリーダーはどこにいますか?

*******Disclaimer*******
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