ラーメン大好き小池さんの唄

GW札幌の天気は今ひとつだった。

そんなGWのとある1日。

隣りに住んでいるおばさんの“なりちゃん”と近所の川沿いに咲く桜を見に行った。

風が強くて気温も低くとても寒かったが時々日が差すと少し暖かく感じた。

桜を見た後、自分は昼飲みしたいと伝えたのだが、なりちゃんが寒いからとりあえずラーメンを食べてあったまりたいと言うのでラーメン屋に行くことにした。

「普通ラーメンって呑んだ後のシメじゃね??」
って言ったら
「そうだねー。でも寒いからラーメン食べたい。どっかいい店知らない?」

以前から気になっていたラーメン屋へ行く事にした。

ラーメン屋までの道すがら神社があったので

「お参りしてもいい?」
なりちゃんに尋ねると
「いいよー。」

神社に着いて鳥居の前で頭を下げて拝殿まで行きお賽銭を入れお参りを済ませる。

その間なりちゃんはただ横にいて不思議そうに様子を見ているだけだった。

神社で手を合わせない人に初めて遭遇した。心の中でとても驚いた。

なりちゃんは一途な新興宗教信者なので他の宗教には目もくれないようだ。

自分は特になんの信仰もしていない。
神社に行っても手を合わせるし、寺に行っても手を合わせるし、教会に行っても祈る。

なりちゃんに神社の神様を信じてるのか?みたいな事を聞かれた。

正直あまりよくわからないが例えば京都観光で寺巡りをすれば観光の一環として拝観料を払ってお参りしたり、お伊勢参りをすればそこで当然のように手を合わせ、出雲大社でも手を合わせ、沖縄平和記念公園でも手を合わせた。

札幌の神社は開拓の歴史と深く関わりがあってとても興味深い。
自分の生活している札幌はその歴史の上に成り立っているものであると思うと、とてもありがたい気持ちなので感謝の意味を込めて手を合わせているとも言える。

なりちゃんには大好きな都市伝説で知った八百万の神の話とかキリストにまつわる話やユダヤ教の話などしたかったが面倒な方向に進みそうだと思い、札幌の神社と開拓の歴史について軽く話し特に神道などの信仰を持っている訳では無い事だけを伝えラーメン屋へ向かった。

ラーメンを食べ終え次に飲みに行く所を考えつつ、ぷらぷらと散歩をした。

散歩しながらなりちゃんの育った家族の話を聞いた。
お父さんとお母さんの墓は宗教の都合で別々の場所にあってお父さんの方には最近行けてないとか、弟さんは結婚してマスオさん状態になっている事を不満に思っているなど。

夕方になりイタリアンの店に行くことにした。

つまみを食べワインを飲みつつなりちゃんの話を聞く。

前とほぼ同じ話。

なりちゃんはだいぶお酒が進むとそこに不満や悩みが入り、入信している新興宗教の話へと繋がっていった。

なりちゃんの不満や悩みの多くは他人と比べているところのようだった。
あとは用心棒さんとの関係についての悩み。

なりちゃんは悩んでも仕方ないとわかっている事に対して悩まずにはいられないらしく話して気晴らししたいのだろうと思ったが、悩みに対してどう思うか意見を求められた。

…それはなりちゃん自身で決めるしかないじゃん。

とは思ったが自分の考えを述べた。

少々自分の境遇を引き合いに出して話しをしたところ“あなたを救いたい”などと言い出しそこから新興宗教について更に熱く語り出したが、その前になりちゃんはなりちゃんを救うところから始めてくださいと思った。

なりちゃん支離滅裂なところあるな。

本人も行き当たりばったりの精神性で男の人に依存して流される傾向を自覚しているようだが、どうやら止められないようだ。

若い頃に新興宗教に入信していた友達に皿を投げつけられながら説教され、なりちゃんも新興宗教に入信したそうだ。

そういえば用心棒さんの話。
前回とほぼ同じだったがいくつかの変更点があった。
なりちゃんより3歳年下だと思っていたが最近無造作に置いてある運転免許証を見たら同じ年齢だったとか。
付き合って一緒に暮らして長いらしいのだが実は用心棒さんには奥さんとお子さんがいて最近離婚したらしいことに気づいた(なりちゃんの推測)など。
一緒に暮らし始めてからすぐに借りている部屋の名義をなりちゃんから用心棒さんにしたけど生活費はなりちゃんが賄っていて足りなくてピンチの時に用心棒さんに出してもらうくらいなのでちょっと失敗だったかな?とか。
用心棒さんとは朝ごはんを食べる時間くらいしか顔を合わせないとか。
なりちゃんは夜晩酌しながらごはんを食べたいけど用心棒さんが酒を飲まないので遠慮しながら飲まないといけないとか。

それでも朝ごはん作るのを面倒だと言いながら嬉しそうな顔をしていた。

結局は惚気ているだけなのか?

とりあえず話は半分聞いてあとは聞き流してしまうのが正解なんだと思った。

すっかり出来上がったなりちゃんはかつての恋愛武勇伝の数々を語り「男見る目ないんだよねー」と。“男!”と言ったあと口に手を当てて“ハハハハッ”って笑うのを何度も繰り返していた。


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