マガジンのカバー画像

6
運営しているクリエイター

記事一覧

【詩】あたらしくつくる

【詩】あたらしくつくる

ずっと音がしている
みみのおくで
クマバチがとんで。
刺さないから
って良いわけじゃないよね
隠してる針。
見えないからって凶器にならない
わけじゃない
蛹の中で黙々と針を構築中

(Scrap and Build)

わたしの肉体が
溶けるまでのあいだ
暇つぶしして
て。
喫茶店のすりガラスに描かれた
波みたいな模様が
グネグネしはじめて
ながれて
ながれおちて
海かと思ったら滝だったみたい

もっとみる
【詩】2000.夏

【詩】2000.夏

見つけられない心地がしている
世界中探しても

遠くで寄せては引き続けている
波のことを考えている
その一室
木々のざわめきの中に
誰かの声をきく
誰かの? わたしの?
穏やかすぎる午後
冬のにおい
不意に
夏の海の気配

ビニールのボール/素足で歩けない砂浜/鋭い岩で切った腕/日焼け止めの匂い/疲れきって眠る車内/更衣室の暗さ/細い道を下って。
べたつく夏
永遠に届かないわたしの8月
の、影

もっとみる
【詩】わたしはまだ知らない

【詩】わたしはまだ知らない

薬局で食器洗い洗剤をえらぶ
半透明のみどりやピンクの粘り気のある液体の中に
彼女を視る。
見た、気がした。
午後8時すぎ
タバコの煙が煙突からの白煙に変わった瞬間を
わたしは知らない
それ、で。
幻視する
あの人が手掴みで撒かれた土から

これからくるながい午睡
生きているという非常事態に時折ぶつかる
ぶつかってしまう。ぶつかれる?
その祝福が重い。
「くが?」
パンを差し出した手から緑が溢れる

もっとみる
【詩】夜、近くの川まで散歩する

【詩】夜、近くの川まで散歩する

川までの道は変に明るい
夜なのに
ずっと、明るい。
その光が、夜のわたしを照らすから

の、武装してないわたしを照らすから
パジャマ、すっぴん、ビーチサンダル、疲れた顔
うつむいて歩く
誰にも見つからないように

空気はうすむらさき
水はくろ
音はぐんじょうで
わたしは。
たぶんとうめい

ここから数歩で水の中に行ってしまえる
行ってしまえばいい
行ければいい
行けば、
行けるならば、
(音、

もっとみる
【詩】湖畔

【詩】湖畔

対岸に船が一艘浮かんでいる
湖の水面の動きに合わせてゆれ、
乗る人の頭が頭上の木々の枝に
微かにふれ
その度、白い花弁がちら、ちら
する。
あの、
何も感じてないみたいな座り方

水面が一層輝く
ゆれて、ゆられて
テレビで見た、フラッシュ。

湖畔をぐるりと一周する
歩いているうちに
おだやかな午睡から
め、が
さめ
る、
さめた。
船に乗るのはわたしだ
あの、船。

【詩】terhubung

【詩】terhubung

わたし達は同じ地平に眠っている
ひとりは9畳の家で
ひとりは湖のそばで
数億の人類が似たような色のシーツの上で
夜中に見るiPhoneの光、
が白熱灯のようにあたたかい

布団の中で大丈夫の断片を積み上げる
目を瞑ると海辺がみえる
みえる海辺を歩いている

異国の文字で書かれたお菓子の袋
波に負けた海藻
まるい曲線を描くガラス片
まだ光っている魚の目
寄せては引く水に合わせて流れる
珊瑚、
の死骸

もっとみる