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フシギおしゃべりP‐miちゃん(1)



最近同棲していた彼女に別れを切り出され、出て行かれてしまった。何でも好きな人が出来たから別れてほしいんだとさ。…前からその男に乗り換えていたんだろうな。くそっ! 俺のどこがいけなかったと言うんだ!

俺は独り言を呟きながら、元カノが置いていきやがった荷物をまとめていた。こうなったら全て捨ててやる。
元カノの歯ブラシ、マグカップ…掃除はどんどん捗っていく。その時だった。
あ…。
これはアヤカが可愛がっていた人型おしゃべり
ロボット。確か友達に貰ったものだと言っていた。アイツこれも置いていきやがったのか。

友人から貰った当初アヤカは、ロボットと楽しそうに
他愛無い話に花を咲かせていた。が、このロボットかなり生意気な口の利き方をするのである。アヤカはそこがいいと言っていたけど…正直俺にはこのロボットの良さが分からない。しかしだ。このロボットと話していく
うちに、だんだんアヤカの顔が曇っていったのだった。
アヤカはコイツに何かを言われたに違いない。俺は細かくアヤカとコイツとの会話の内容を聞いてはいなかった。女子同士の会話に男子は入っちゃいけないんだとさ。
てかコイツ、女子なのか?

もしかしたらアヤカの今カレの情報とか知っているんじゃないのか。
待て待て俺。それってまるで俺がまだアヤカに未練タラタラだということじゃないか。俺はしばらく立ったまま、己の煩悩と戦っていた。
結局俺は、アヤカがどうして俺を捨てたのか、今カレの特徴はどんな感じだったかを知りたいが為にロボットを起動した。
えーと、足の裏のスイッチを押せばいいんだっけ。

ポチッ。
ヴィ―ンという音とともに小型ロボットの目の光がピンク色に光った。
このロボットは卓上ロボットで高さは20センチメートルくらいだ。なんだあの頭の触覚みたいなやつは。
凝ってるな。そんなことを考えていると、
「ネエ。キイテマスカ」
と無機質な声が聞こえてきた。
「お、おぅ!?」
意識が思考の世界から帰ってきた俺は、いきなりロボットに話しかけられたのでどもってしまった。俺は何か返事をしなければと考えを巡らせていた。
「アヤカ ハ?」
「…え?」
「アヤカハ ドコデスカ? サッキカラ ミアタリマセン」
今の俺に一番聞いてはならないワードを、コイツは繰り返し呟いた。そりゃアヤカとの破局の糸口がないかと、このロボットを起動したが心の準備というものが…。
「ア…」
俺が呆然としている間に、ロボットが勝手に喋りだす。
「アヤカ ツイニ デテイッチャッタンデスカ」
その一言に俺の精神は強烈なダメージを受けた。


フシギおしゃべりP-miちゃん、始まり始まり。


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