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場面緘黙児の自己肯定感とおしりふき①

次女の場面緘黙(ばめんかんもく:家以外の場所で話すことができない不安障害)治療についてのお話です。

※場面緘黙(ばめんかんもく)とはおよそ200人~100人に1人の発症率と言われる不安障害で、特定の場面(家庭など)では話せるのに、それ以外の社会的場面(学校、レストラン、お店など)では声が出せなかったり話すことをためらうことが概ね1か月以上続く状態を指します。バイリンガルやマルチリンガル児の場合は発症率が上がるとされ、女児の場合は男児に比べ2倍の発症率と報告されています。「人見知り」「シャイ」という性格の問題とされたり、「成長すれば治る」と放置されたりすると「発話を回避する」状態が強化され、大人になってからも抑うつ状態や適応障害を起こすことがあるので、早期発見・早期介入が重要です。

うちでは夫が英語、私が日本語で子どもたちに接していて、現地語であるヘブライ語は義家族との交流と幼稚園・学校で自然に身につけるだろうとして家庭では使用していません。それでも次女は家や義実家で3つの言葉を使い分け、時にはうるさいほどに話す笑い上戸な子どもです。

実は2年前、次女が3歳の時に幼稚園年少クラスでほとんど話さないと先生から連絡があり、場面緘黙についての本は読んでいたのですが、夫が「子どもを不安障害と決めつけずに、子どもの成長を信じよう」と言い、様子を見ることにしていました。

昨年9月から始まった幼稚園の年中クラスでは次女は先生・お友達と一言も話さず、間にロックダウンが入り、幼稚園が再開した2月から年度末の6月までもずっと幼稚園では言葉を発しなかったため、言語聴覚士と面接調査をすることになりました。

面接調査の結果は聴覚、認知能力的には特に問題なく、また一年後に来てくださいとのことでした。ただ、1年間幼稚園で一言も話さなかったことと、家庭では怒りで物を投げたり壊したりという行動が続いていたため、セラピーを受けることにしました。次女は絵が大好きで、紙を使ってお人形が生活するボートを作って遊んだりすることから、アートセラピーを受けてみることにしました。セラピーの予約が取れたのはそれから約2か月後のことでした。

(写真は次女の作品:水色と青の丸はそれぞれ大きな動物用の大きなトイレと小さな動物用の小さなトイレで、横に小さなトイレットペーパーが描かれています。他にもお風呂や洗濯機、ボタンなどわりと細かいところまで設定があります。)

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8月に入り、アートセラピーのセラピストさんと夫婦のみで面談したところ、妊娠がどうだったかから始まり、いつからデイケアに通い始めたか、主に誰と何語で話すのかなどと成長についての質問を受けました。

そして、どの程度生活動作が自立しているかの質問になった時、朝自分で起きるか、着替えはできるか、食事は自分でできるか、一人でトイレに行けるか、歯みがき、就寝は一人でできるかなどの質問に交じって「おしりは自分で拭けますか」とピンポイントな質問がありました。おしっこは自分でできるのですが、うんちは手伝ってあげていたため、それを伝えたところ、「どうして?」との質問。

「どうして・・・?」とは考えたことがなく、周りに聞いても「うちもまだ拭いてるよー」と友達も言うので、4才なら手伝っても仕方ないかなと思っていたのですが、「自分でできるか聞いて、見守ってやらせてみるようにしてみてください」とのこと。どうやら「おしりが拭ける」というような小さな自信が自己肯定感のスモールステップになり、自分にコントロールがあると自覚できることが家族以外の前で話すというチャレンジの下支えになるらしいのです。

他にも就寝時に自分のベッドで寝て起きることが大切なこと(眠りに落ちた場所と目覚めた場所が同じであることが大切)、そのために寝かしつけの際、親が子どもの寝室に少し滞在して安心させてよいなどのアドバイスがありました。

実は昨年9月に義母が交通事故に遭って7か月間入院生活を送ったため、子どもたちは信頼できる相手とヘブライ語で対面で話す時間が激減していました。「現地語は日常生活の中で自然に身につけるだろう」と思っていましたが、幼稚園は子どもにとっては緊張を要する場で、安心して話せる場ではないというのも面談から改めて学んだことでした。生まれた時から現地語に囲まれていても、「母語」と言えるだけの心の通った会話環境が十分だったか、考えさせられました。

自分がイスラエルに移住してきてのことを考えると、日常会話にしても自動車の運転にしても、自分でできることが増えることはやはり自信につながるもの。6歳の長女に試しにお風呂に一人で入るように言ってみたら機嫌のいい時は次女と二人で入ってくれるようになりました。その②に続きます。


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