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学校休んでもいいんだよ

9月になってしまった。
「なってしまった」。

気持ちとしてはすごく嬉しいんです。
夏がつらくて仕方なかったし、はやく秋が来てほしかったし。一秒でも早く涼しくなってほしいし。
今日なんて雨がザーっと降って、外もなんだか暑くなくて、やれうれしやと思う。

でも「なってしまった」感があるのは、9月ということは娘の学校が再開するということで、つまり、早起きとお弁当作りがまた始まるということなのです。

6時に起き、週6で弁当をつくる日々がまた始まることに対して、めちゃめちゃ自信ない。
夏バテしてるし、謎の体調不良が続いているし、なんかおなかも痛いし、せめて健康になってからにして~という気分。そんなのわたしの勝手なアレですけど。

早起きがとにかく苦手なんだ。
中学生の頃から宵っ張りで、夜はずっと深夜ラジオを聴いていた。1時から始まるオールナイトニッポン第一部。そして、3時から始まるオールナイトニッポン第二部にまで突入することもしばしば。そんな時間まで起きててよく学校行ってたなと思うけど、あの頃はまだ若さでなんとかなった。
(電気グルーヴのオールナイトニッポンが大好きでした)

社会人になり、結婚して、子供が産まれたので自然と早起きもできるようになるかと思ったが、人間そうそう苦手なものは克服できないもので、いまでも6時台に起きるときは気合を入れないと無理。つまり、9月からは毎日気合いを入れないといけないってことです。

娘はとてもいいやつなので、
「お母さん、無理してお弁当作らなくても大丈夫だよ。コンビニで適当に買っていくし。わたしコンビニのおにぎり好きだよ」
なんて言ってくれるのだが、そう言われると余計になんだか胸が痛んでしまい、目を3にしながら(  ³ω³  )作るのである。
(夫に作ってもらうときも、ごめん今日は買っていって~という時もあります、かなりあります)

わたしは世のお母さんがたに比べたらぜんぜんダメ母さんだなとよく思う。
娘の前でも弱音を吐いてしまうし、わたしの母親の完全な母親ぶりを思い起こすと「なんてことだ」と頭を抱えたくなるくらいお母さんらしくないと思う。ずっとそう思ってる。
でも、じゃあ果たしてお母さんらしさってなんだろねと、お母さんに正解なんてあるのかね?とも思うのである。
だって本当に、お母さんらしさってなによ。

わたしの母親は専業主婦で、ごはんは毎食きちんと手の込んだものをこしらえ、お弁当はもちろん欠かさず用意してくれたし、時代が時代だったとはいえ冷凍食品やできあいのものは決して入れなかった。わたしのお弁当のためだけに朝からはんぺんにチーズを挟んで揚げたりしていた。
なんせ、我が家の「コンソメスープ」は、母が1から牛すね肉や野菜を煮込んで作った本当のコンソメスープだったのだ。いま思えばたかがスープのためにそれだけの手間をかけていた母は本当にすごいなと思うが、真似しようとは思わない。

おいしいお弁当を毎日用意してくれていたにも関わらず、わたしは学校を休みがちだったので、せっかくこしらえてくれたお弁当を家で食べることもままあった。そんな時母は、いつも悲しそうな顔をしていた。
「せっかくお弁当をつくったんだから学校に行ってほしい」と言われることも多かったし、朝起きて「今日は休みたい」と言うと、ため息をつかれた。
そういう時代だったから仕方ないけれど、母はわたしが学校にまともに通えないということをいつまで経っても「普通ではない」と思っていたようだし、しんどそうだった。

手の込んだお弁当は作らなくてもいいから、ひとこと「学校休んでいいんだよ」と言ってほしかったな、と思う。
「つらかったら今日は休みなよ。家でお弁当食べたらいいじゃん」と。
お母さんは自分に普通に学校に行ってほしいと思っていてつらそう。でもわたしは「普通」ができない。
学校を休んで家で食べる母のお弁当は、おいしいけど、いつも気まずさと申し訳なさの味がにじんでいた。

なのでわたしは、娘が朝起きて憂鬱そうな顔をしているときは、
「今日は休めば?」
と言う。
「好きなテレビ見ながらお弁当食べたら?きっとおいしいよ」
と言う。
娘が「運動会やだな」と言えば、「休んじゃえばいいじゃん。運動会なんて行かなくても別に死なないよ」と言う。

だって本当にそうなんだよ。
お弁当は家で食べてもおいしいし、運動会なんて出なくても人生はちゃんと続いていく。
学校なんてどう乗り切るかであって、ごまかしごまかしでも大丈夫。乗り切れなくたってなんとかなる。
こうでなければいけない、なんてことなんて人生にはあんまりないと思う。

あなたがつらくない気持ちであることがもっとも大切なことだ。
早起きも弁当づくりも憂鬱な母さんではあるが、そこだけは、自信をもって言ってあげられる母さんでありたいと思う。
(せめてそこだけは……。)

しかし、はぁ、明日から早起きである。
お弁当生活卒業まであと三年半。
ごまかしごまかし乗り切るしかない。