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北京ドタバタ旅行(49)

 この日本人にはなじみのない烤という字はカオと発音するのですが、こういう風に裸にされ、足から逆さに吊らされているのを見ていますと、この烤という字の意味は、火で焼かれて、客の面前で裸のままに晒される我が身の不幸を考えている鴨の姿のように思えてならないのでした。

 そうしますと北京中に実に多くの不幸を嘆く北京鴨の怨嗟の声が響いていると思えたのは、私だけでしょうか(きっと私だけでしょう)。




 我が身の不幸を嘆いているいているかも知れない北京烤鴨が運ばれてきました。と書くと、きっと大皿にその姿のままローストされた鴨の姿を想像する人も多いでしょうが、実はそうではなかったのです。

 哀れ北京ダックはローストされ、逆さにつるされるだけでなく、客の前に出される前に、小さく薄く、切り刻まれていたのです。その刻まれた北京ダックには、なにか黒いどろっとした海苔のようなものと、餃子の皮を多少大きくしたような丸い白い皮と、ほんの少しの野菜が付いてきたのです。

 これは一体どういう風に食べたらいいのでしょうか?
何分日本では「めしや」というところを得意にしている我が家ですので、さっぱり分かりません。レストランの客は立て込んでいますが、日本人とおぼしきグループは、我が家だけです。さりげなく皆は我が家の立ち居振る舞いを見ています。変な食べ方をしたら馬鹿にされそうです。

 それにこの店は値段が高いのか、回りの人はあまり多くの品数を取りません。テーブルの上が料理の皿で1杯なのは我が家だけです。この鴨と黒い海苔と餃子の皮と野菜をどういう順番で、どのように口に運んだらいいのか、困ってしまいました。

北京ドタバタ旅行(50)

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