2023年7月の日銀政策決定会合で、YCCの上限が1%まで引き上げられました。これを受けて日本の10年金利は0.5%を超えて、0.65%、0.67%まで上昇しています。そこで気になるのは、いつマイナス金利は解除されるのか? 日銀はいつ利上げするのかということです。

それならば金融ストラテジストの岡崎良介さんが提示するザキオカ計算式を使って、将来の政策金利を予想してみましょう!

YCCの上限が1%なのだから利上げしても1%まで

SNSではいろいろな予想をしている人がいて、「日本の消費者物価が3%を超えているんだから、政策金利も3%まで上がる!」などと極端な見方もあります。

しかし、日銀はYCCの上限を1%としているので短期金利は上がっても1%まででしょう。そもそも10年金利は9月8日現在で0.67%程度で頭打ち、早期の利上げを織り込んでいるなら長期金利はもっと上がっているはずで、3%まで金利が上がるという予想は的外れに感じられます。

市場が決める長期金利

ここからは金融ストラテジストの岡崎良介さんから、長期金利決定モデルと予想政策金利の計算式を学んでいきます。詳しくは以下の動画を参照してください。

岡崎良介【金融リテラシーの向上『金利とはなんだろうⅠ』 金利の歴史から最前線へ｜投資レベル4投資図鑑】

長期金利決定モデル

長期金利＝N年間の平均短期金利＋期間リスク

これが最も単純な長期金利の決定モデルで、2001年に植田日銀総裁も講演で使用しています。期間リスクは一般的に期間が長くなるほどプラスされますが、仮に期間リスクを0として計算すると

・2年金利≒1年目の政策金利＋2年目の政策金利/2
・3年金利≒1年目の政策金利＋2年目の政策金利＋3年目の政策金利/3であり

10年金利は(1年＋2年＋3年＋4年＋5年＋6年＋7年＋8年＋9年＋10年)/10
で導き出すことができます。

ただしいくら「日銀を信じてくれ」と言っても、10年も先になると何が起こるか分かりませんから、5年までで優位性があると岡崎さんが解説しています。

将来の政策金利を予想する

さてここからが本題です。日銀がいつマイナス金利を解除するのか、いつ利上げするかを債券市場に聞いてみましょう。

岡崎さんが提示する予想政策金利の計算式は以下の通りです。

1年後の政策金利＝1年金利
2年後の政策金利＝2年金利×2－1年後の予想政策金利
3年後の政策金利＝3年金利×3－(1年後と2年後の予想政策金利)

1年後の政策金利はそのまま1年金利なので見たままです。2年後の政策金利は2年金利×2から1年金利を引いたものです。2年後の予想政策金利が分かれば3年後の政策金利も算出できます。

同じように4年後の政策金利は4年金利×4から1年金利と2年後の予想政策金利と3年後の予想政策金利を引いて、5年後の政策金利は5年金利×5から1年金利と2年後の予想政策金利と3年後の予想政策金利と4年後の予想政策金利を引引いて算出します。

日銀政策決定会合開催日である7月28日の終値から計算するとこうなります。

1年後　マイナス0.10%
2年後　0.07%
3年後　0%
4年後　0.20%
5年後　0.64%

つまり債券市場の人たち(銀行、証券会社、生損保、ヘッジファンドなど)は、1年後も政策金利＝無担保コールレートはマイナスのままで金融政策の変更はないが、3年以内にマイナス金利は解除されると予想していることが分かります。

そして4年目に0.2%に利上げされ、5年目に0.64%までの利上げを予想していることが分かります。もちろんこれはあくまで予想で外れることもありますが、少なくとも「3%まで金利が上がる」といった大幅な利上げは日銀はしないだろうというのが債券市場の見方です。

結論:3年以内にマイナス金利は解除される

ここから学べるのは、3年間はマイナス金利の解除くらいだろう、だから住宅ローン変動金利はほとんど変わらない。

4年後の2027年になるといよいよ金利がプラスになる、普通預金にも0.1%くらいの金利がつくかもしれない、5年後の2028年には普通預金の金利は0.3%くらいになるかもしれないということです。

「住宅ローン金利がいつ上がるのか不安」という人はほっとしたのではないでしょうか?　上がったとしても0.5%くらいなので、「慌てて固定金利に借り換える必要はないな」など冷静な判断ができるのではないでしょうか。

また無担保コールレートがプラスになれば現在ほとんどついていない普通預金にも金利がつくようになり、こちらはプラス材料です。