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カゴメの23年12月期1Q決算を分析

カゴメは4月28日、23年12月期の第1四半期決算を発表しました。どんな業績だったのか分析していきます。

1-3月期最終は36%増益

1-3月期実績

カゴメの23年12月期第1四半期は売上8.8%増の480億円、事業利益(売上-原価-販管費)54%増の33.6億円、営業利益53.4%増の34.1億円、最終利益36.3%増の20.3億円の増収増益での着地でした。

出典:決算短信

今期予想

1-3月期最終利益は通期計画41億円に対して進捗率49.6%に達しましたが、業績予想に変更はなく、事業利益42.2%減の74億円、最終利益55%減の41億円を据え置いています。

1年の1/4で既に半分近い利益を稼いでることになり、残り9ヶ月の最終利益が21億に留まるとは思えないので、どこかで上方修正を出してくる可能性が高そうです。

出典:決算短信

売上の4割を占める国際事業の成長が支え

利益率改善も原価率は上昇

今期の事業利益42%減益予想に対して、1Qは54%増益という予想外に強い決算を出してきたというのが第一印象です。まだ3ヶ月終わっただけとはいえ、営業CFが1年前のマイナス15.7億円からプラス42.5億円に大幅に改善しているのも好印象です。

もちろん多くの食料品メーカーと同じようにカゴメも原材料価格高騰の逆風を受けています。それでも事業利益率は4.9%→7%に、営業利益率も5%→7.1%に改善しているのは安心材料です。ただし原価率は64.7%→65.6%に上昇=売上総利益率は低下していて、値上げによる単価増だけではコスト増を吸収しきれなかったことを示しています。

出典:決算補足資料

事業利益の増減要因を見ると、売上総利益は増加したものの押し上げ効果は9.2億円に留まり、人件費、販売促進費、広告宣伝費を削ることで11.8億円の増益分を確保していることが分かります。

出典:決算補足資料

その結果、販管費率は30.5%→28%に改善しましたが、原材料価格上昇がさらに続いた場合に、コストカットでどこまで吸収できるのかやや疑問です。
なお原価率は年々上昇傾向にあります。

出典:IRBANK

国内は減収減益

カゴメには4つのセグメントがあり、そのうち国内でケチャップやトマトペースト、トマトジュースや野菜ジュースを製造販売するのが国内加工食品事業で、売上の6割を占めています。

残念ながら1-3月期は原材料高に値上げが追いつかず、事業利益は前年同期の15.3%増→19.7%減に転じ、事業利益率も7%→5.7%に低下しています。

出典:決算補足資料

また売上を見ると、トマトジュースは好調に推移も、「野菜生活100」シリーズは価格改定による需要の落ち込みで、ケチャップやトマト調味料などの食品も値上げ前の駆け込み需要の反動で、通販も新規顧客数が前年を下回ったことでそれぞれ減収となり、セグメント全体でも前年同期の2.4%増収→2.2%の減収に転じています。

まだ1年の3ヶ月が終わったところとはいえ、売上が落ちているのは気になります。四半期の推移を見ても売上は減少傾向に見えます。

出典:決算補足資料

国際事業は売上5割増で利益も3倍に成長

減収減益の国内とは対照的に好調なのが国際事業で、北米、ポルトガル、台湾、豪州に子会社を持ち、売上の4割を占めています。

事業利益は前年同期の33%減→3.3倍、事業利益率4.9%→10.6%と2倍以上に改善し、収益性が高まっていることが分かります。コスト増をしっかり価格転嫁できているのは値上げが遅れがちな国内とは対照的です。また売上も前年同期の17.2%増→52.5%増と成長が加速しています。

中でも米国でトマトペーストなど食品の製造・販売を手がけるKAGOME INC.は、売上61.4%増の94.3億円、事業利益4.7倍の13.5億円を稼ぎ出し急成長しています。他にポルトガルを拠点にトマトペーストやビザソースを製造・販売するHolding da Industria Transformadora do Tomate, SGPS S.A.も成長著しく、売上78.7%増の57.9億円、事業利益5倍の8.8億円と稼いでいます。売上に占める割合こそ小さいものの、利益率が高く成長が続いている海外子会社が増益に貢献した形です。

出典:決算補足資料

なお1年前よりもドル円で14%、ユーロ円で9%円安に振れたことで、為替影響で売上を20.8億円、事業利益を2.4億円押し上げていて、円安が追い風に働いたことが分かります。

好調な国際事業に支えられて増収増益

3ヶ月前にかなり弱気な今期予想を出したカゴメが、1-3月期は大幅増益の強い決算だったのは正直驚きです。

ただし中身を見ると、原価率は上昇していることから、値上げだけではコスト増を吸収しきれず、コストカットによって事業利益率が改善した結果であることが分かりました。売上の6割を占める国内は減収減益と苦戦が続いているのは変わっていません。一方で米国やポルトガルなどの海外子会社は成長著しく、大幅な増収増益を達成しました。

カゴメの海外売上高比率は1年前の3割から4割に増えています。国内市場が頭打ちでも海外で売上が伸びていけば、まだまだ成長を期待できそうです。


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