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EUフィルムデーズの季節到来!

 さて、今年もEUフィルムデーズの季節がやってきました。開催20周年を迎え、会場も4箇所に増えており、毎年楽しみにしているフィルムデーズファンとしては喜ばしい限りです。

【東京】国立映画アーカイブ 6/2(金)~6/30(金)
【京都】京都府京都文化博物館 6/20(火)~7/23(日)
【広島】広島市映像文化ライブラリー 7/21(金)~8/5(土)
【福岡】福岡市総合図書館 8/9(水)~8/27(日)

https://eufilmdays.jp

 北欧諸国からは、以前にnoteで取り上げたことのあるスウェーデンの作品『タイガーズ サンシーロの陰で(原題:Tigrar)』のほか、フィンランド『ブラインドマン』、デンマーク『MISS OSAKA / ミス・オオサカ』が上映されます。

 東京会場の開催2日目に『タイガーズ』を鑑賞してきましたが、前評判に違わず、とてもよい作品でした。映像がきれいで、檻を思わせるような格子越しのショットがたびたび挟まれるのが印象的です。主演のエリク・エンゲもすばらしく、ベングトソン選手の純粋さ、ひたむきさ、繊細さが非常によく表れていました。(以下ネタバレを含みますので、前情報なしで見たい方はご注意を!)

 「サンシーロの陰で」という副題は、原書の自伝タイトル(”I skuggan av San Siro”、英訳だと”In the shadow of San Siro”)からきています。サッカーに疎くて知らなかったのですが、「サンシーロ」はインテル・ミラノのホームスタジアムの通称なんですね。詳しい人ならイタリアのサッカー界の話だとすぐにピンとくるのでしょう。また、ベングトソン選手がインテルで所属することになるのが、クラブの育成部門の最上位にあたる「プリマヴェーラ」という組織なのですが、そこではチームごとの勝敗はあまり関係ないということも、本作を見ている中で知りました。とにかくトップチームを目指すため(あるいは他チームに放出されないため)に競り合い、個人の技量を示すことが重要視されているようです。そのような背景もあって、同じチーム内でも足を引っ張り合うような事態が起こるのだと納得しました。

 自伝を元にした作品で結末が分かっているので、薄氷を踏むような展開もわりと冷静に見届けることができましたが、もし知らずに見たら終始ヒヤヒヤしていただろうと思います。ただ、描かれているのは厳しい状況ばかりではなく、アメリカ出身の選手と仲良くなったり同郷の恋人ができたり、トップチームに招集されて活躍する場面もあります。知っている限りのイタリア語を挙げながら恋人と一緒に街を歩くシーンなどは、まばゆいばかりです。しかしながら、支えであった友人や恋人との距離が開いてしまったことにより、過酷な状況の中で追い詰められていきます。とくに恋人とは、自ら奮起するために関係を解消したにもかかわらず、皮肉な結果を招いてしまいました。最後はイタリアを去ることになりますが、映画では新たな出発を感じさせるポジティブで希望のある締めくくりとなっています。

上映後トークの様子

 上映後にはロニー・サンダール監督とプロデューサーのピオドール・グスタフソン氏が登壇して、トークが行われました。ヨコハマ・フットボール映画祭の福島成人さんが聞き手を務められたこともあってか、サッカーファンの観客も多かったようで、熱量のあるQ&Aを拝聴することができました。

 東京は会期終盤ですが、他3会場の上映はまだまだこれからなので、ぜひ足を運んでみてください。

(文責:藤野玲充)

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