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★乗越たかおダンスマガジン評論集(集成版) vol.1 2013年11月号〜2023年3月号


前書き

本書は2013年11月号から、2023年3月号までダンスマガジン誌(株式会社新書館発行)に掲載された乗越たかおの舞踊評論をまとめたものである。

同誌は数少ない日本の舞踊専門誌の中でもコンテンポラリー・ダンスを含む評論が継続的に掲載され、かつクオリティを保っている点、我が国の舞踊評論の屋台骨を成している。

約10年間の舞踊評論を概観することは、日本のダンスの流れ、また何人かのアーティストの成長を見ることにもなるだろう。

その中には百年に一度の厄災といわれるコロナ禍に対してアーティスト達がどう立ち向かったかの記録も含まれている。

本書は通常の作品評を中心にしており、フェスティバルの報告など長文のものについては別の機会にまとめるつもりである。

また雑誌掲載時には文字数の関係で削除しなければならなかった部分を復活させて掲載している。

特典評論は、有料コンテンツとして販売されているものと、ドイツのフェスティバルからの依頼で書いたものを収録している。

また4本300円という廉価な「お試し版」も用意してある。
「お試し版 内容一覧」
興味のあるものだけ拾い読みするのもいいだろう。

舞踊評論はまとまったものが出版されるのにはハードルが高く、後進の書き手が読むことも簡単ではない。
しかしこのような形なら、ダンス公演のアーカイブとして、若い書き手の参考として、フットワーク軽く残すことができる。願わくば他の舞踊評論家や書き手も同様にどんどんまとめて残してほしい。

そして、若い書き手にも、こうした出版の可能性があることを示していきたい。

舞台上に起こった奇跡の瞬間をつなぎ止めて後世に伝えるのは、映像ではなくそのとき魂を震わせた言葉だからである。

※無断複写・転載を禁じます。許可なく公開、書き換え、または再配布することは著作権法違反となります。


■プロフィール


乗越たかお(のりこしたかお)
乗越 たかお Takao Norikoshi
作家・ヤサぐれ舞踊評論家。株式会社JAPAN DANCE PLUG代表。
06年にNYジャパン・ソサエティの招聘で滞米研究。07年イタリア『ジャポネ・ダンツァ』の日本側ディレクター。19年スペインMASDANZA公式審査員。
現在は国内外の劇場・財団・フェスティバルのアドバイザー、審査員、講座など活躍の場は広い。エルスール財団新人賞選考委員。
「ProLab 舞踊評論家[養成→派遣]プログラム」共同主催&メンター
〈主著書〉
『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』(作品社)
『ダンス・バイブル』(河出書房新社)
『どうせダンスなんか観ないんだろ!?』(NTT出版)
『ダンシング・オールライフ~中川三郎物語』(集英社)
『アリス~ブロードウェイを魅了した天才ダンサー 川畑文子物語』(講談社)他著書多数。
『乗越たかおダンスマガジン評論集(集成版) vol.1』発行(note)。
『ぶらあぼ』『アクトガイド』で連載中。
〈進行中〉
バレエチャンネル(新書館)連載の『バレエファンのためのコンテンポラリー・ダンス講座』、『ぶらあぼ』(ぶらあぼホールディングス)連載の『誰も踊ってはならぬ』のコラム集の電子書籍化も進行中。


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■2013年〜

ラスタ・トーマス『BAD GIRLS meets BAD BOYS』


 (初出 ダンスマガジン 2013年11月号 約1200字)

 イタズラっ子のような笑顔とずば抜けた身体能力で若い頃から注目されていたラスタ・トーマスが、自ら率いる『バッド・ボーイズ・オブ・ダンス』を引き連れて来日した。世界中で500ステージを超える人気作品だが、今回は元宝塚を含む女性ダンサー達「バッド・ガールズ」をマッチングさせる企画である。

 構成は女性陣の『バッド・ガールズ:ショウケース』(振付:原田薫)、男女混合の『バッド・ガールズ・ミーツ・バッド・ボーイズ』(合同振付)、そして男性陣による『バッド・ボーイズ・オブ・ダンス:ロック・ザ・バレエ』(振付:エイドリアン・カンターナ)。その両者をつなぐ『ザ・ストーリーテラー』という短い景のMCとしてTAKAHIROが活躍していた。自身がNYのアポロシアターで9週連覇するほどのダンサーであり、実に良いアクセントになっていた。

 元宝塚男役トップスターの湖月わたるや水夏希に加え、原田薫など5人からなる『バッド・ガールズ』は迫力満点。原田の振り付けはバレエからショウダンスまで幅広く、出演者の個性を引きだしていた。ただ全体に「大人の悪女」のイメージが強すぎたのではないか。ラスタ達「ボーイズ」が「悪ガキ」のチャーミングさと躍動感、そして大人のセクシーさまでも存分に発揮していたことを思うと、「ガールズ」の表現の幅はもっと広くとってもよかったろう。それはとくに両者が共に踊る第二幕で顕著になっていた。 

 満を持しての第三幕は副題に『ロック・ザ・バレエ』とあるように、マイケル・ジャクソン、クイーン、プリンスなどの曲が使われ、ノンストップで疾走する。特に

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