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コモングットなユネスコ無形文化遺産「三段酪農(Dreistufenlandwirtschaft)」

「これは古典的な農業経済学の目で見てはいけない」と、一緒に調査した日本の農業経済学者は自戒をこめて言った。
香ばしいチーズをつくって売るだけの経済活動ではない。
経営の数字を聞き出して分析するのではなく、時間をかけて、一連の生産プロセスを、そばでじっと観察し、写真や動画に収め、彼らが語ることを、五感を研ぎ澄まして傾聴する、という文化人類学的な調査になった。濃い4日間だった。

オーストリアのブレゲンツァーヴァルト地域で数百年前からで継続している、お金に換算できない多面的な価値を生み出す経済活動。「生きる道」と言ったほうがいいかもしれない。

自然の包容力の範囲内で、
人間らしく、包摂的に、スピリチュアルに、
季節の変化にわせて、動物と一緒に3つの場所を移り住む。
多様で美しい農耕文化景観を創り出し、
信頼と共感という強力な接合剤の力によって、
家族・親戚で助け合い、
同業者と協働し、
地域の森林業や手工業、宿泊・飲食業、小売業、市民、行政と相互に支え合い、
豊かな地域を創発する。

このようなコモングット(公共善)な経済活動は、古今東西、世界中にある。
一次産業だけでなく、製造業やサービス業でも。
とりわけ地域に根付く、零細・中小企業で。
それらの企業が創出する多面的な価値は、そもそも財務諸表やGDPには含まれなし、社会で公正に評価されていない。売上や利益の向上を主に目指す現代の経済システムでは日の目を浴びない。

12年前から中欧を震源に世界中に広がっている「公共善エコノミー(Ecnomy for Common Good)」は、ブレゲンツァーヴァルトの「三段酪農」のような、資本主義市場経済で取り扱わない、もしくは表現できない、多様な人間的価値の生産を見える化する。

自発的に「公共善決算」を行っている1000以上の企業は、
社会の模範になりたい。
変革の主体になりたい。
足りない部分を知りたい。
自らを進化させたい。

自治体や地域、学校や大学、研究機関も一緒になって運動に参加している。

日本にもコモングット(公共善)な企業、それを目指して頑張っている企業はある。それらを支援する、支援したい自治体も。教育プログラムに入れたい大学や学校も。

「萬(よろず)の神」「結(ゆい)」「話し合い」「三方よし」は、日本特有と言われるが、実は世界各地にあるユニバーサルな価値。世界と通じ合える共通言語。

こちらで「公共善エコノミー」実践ツールのチーム翻訳事業をクラウドファンディングしています。締め切りは8月末。参加、賛同、ご支援いただければ嬉しいです。
https://camp-fire.jp/projects/view/681555?list=projects_fresh

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