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19.プロパー社員と出向者の評価の違いを留意する

■Keynote
私(荻田伍さん)がアサヒ飲料の副社長になったのは2002年です。同社はそれまで3年続けて当期利益が赤字で、給料も下がり、先が見えない状況でした。ビール本体からの出向ですから、プロパーを全く知らない。地方に行っては人を集めて一緒に飲みながら、とにかく情報開示とコミュニケーションに努めました。「このままでは会社は消滅し、上場廃止になってアサヒビールの傘下に入る。飲料事業は縮小になるから社員は辞めざるを得ない。そうなる前に自立していこう」と危機感を植えつけました。
By 荻田伍 (アサヒグループホールディングス株式会社 元会長兼最高経営責任者)

■出向者の処遇は、出向先での評価をもとに、出向元の賃金体系によって賃金を決める
基本的に出向者の処遇は出向契約に基づいて決める。出向の多くのケースは、出向先の賃金水準の方が出向元より低いことが多いため、出向元の賃金体系を無視して出向先の低い賃金水準を適用すると、従業員は出向することで賃金水準が下がってしまうことになりかねない。

それゆえ、出向者が賃金水準で不利益を被らないよう、出向者の人事評価は複雑なプロセスを取ることが多い。具体的には、人事評価は出向先で行ない、その情報をもとに出向元で賃金を決定し、さらにそれに基づいて出向先の賃金を決め、負担割合は別途法人同士で決めるというプロセスである。
つまり、出向先の評価結果をもとに、出向元の賃金体系によって賃金が決まるという形になる。この場合、出向先での評価を、出向元の評価結果に「翻訳し直す」ことがポイントとなる。

■「プロパー社員と出向者の評価は異なる」と心得る
プロパー社員と出向社員、いずれも同じ役割を果たし、同じ評価制度を適用しても、報酬賃金制度が異なれば、給与に差が生じることも起こりうる。
得てして、親会社からの出向社員の方が、金銭報酬が高くなるケースが多い。
そしてプロパー社員は、親会社からの出向者をよく見ている。自分より働いているか、仕事はできるか、給与は適切か。
経営者や人事は、制度上そういうものだということをあらかじめ心得ておくべきだ。そして無用なコンフリクトを避けるためにも仕組みを正しく理解したうえで運用していくことが大切だ。


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(出典:労政時報『現場で直面する人事評価の課題-ケース別8つのQ&A』 高原暢恭著)

■Let's Think!
□ もし、プロパー社員から「出向者の給与の方が高い、不公平だ」と迫られたら、どう対応すべきだろうか?

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