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車椅子の女性

会社帰り。駅の前にはロータリーがあるだけで、お店もない。
人通りも少ない。行き交うのは駅に向かう人と駅から出てくる人だけ。

私は駅に向かう道を、音楽を聴きながら歩いていた。

すると視界に一人の車いすの若い女性が入って来る。どうやら私に何かを伝えたい様子。

イヤホンを外して、聞いてみる。

「どうかされましたか?」

女性は歩道の奥側、車道から離れた場所まで、車いすを押して欲しいそう。
私は二つ返事で、指定の場所へ車椅子を押した。

こういうとき、少ないけど色んな人が通る中で、私に声を掛けてくれたことが嬉しい。
何かをする前から「いい人認定」されたみたいな気分になる。

「選ばれた!」

そんな気分になりつつ、その女性に他にして欲しいことはないかを聞くと、ないそうだった。

でもその「助けた」高揚感で、変なことを言ってしまった。

「何かあったら、いつでも言ってください」

通りすがりの人だから、いつでも会えるわけでもないのに。
その場を離れつつ、可笑しなことを言ってしまったなと思いつつも、彼女のおかげで気分は爽快だった。


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