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寝ずの番

以前、演劇公演の手伝いをしていたとき。私は照明を指定の場所に取り付けたり、影段や平台を設置する、大道具のような仕事をやっていた。人手が不足する、力仕事を主に担当していた。

次回の舞台は9月で、場所は雑居ビルの1階ガレージ。屋根はあるけど、鍵が閉まるドアはついていなかった。

ぱっと見、演劇の公演をやるような場所には見えないから、照明やミキサーが置いてあるようには見えないけれど、高価な機材の設置をしているので、本番を迎えるまで、誰かが泊まって番をしなければならなかった。

通常は舞台の主催者2人が泊まって番をしていた。ただ、やっぱり、ガレージのような場所で寝泊まりをしているので、疲れは取れない。

本番前に1日だけ、私ともう1人の手伝いAさんに、1日だけ交代して欲しいと主催側から打診があった。私たちは喜んで引き受けた。

Aさんは当時、車を持っていたので、泊まるにあたって、色んなものを車に積んで持って来てくれた。その中でも有難かったのは、毛布だった。当時の9月は、日中は暑さが残るけど、夜は少し寒い。でも毛布1枚あれば、十分に過ごせるはずだった。

私たちが番をする当日。その日も割と遅くまで、作業をしていた。私とAさんは作業が終わりに近づき、主催の2人には、そのまま、帰ってもらおうとしていた。

するとその2人は疲れがピークに達したのだろう、いつの間にやら寝ている様子。

私たちは起こすか、そのまま寝かすかどうかを話した。あまりにもぐっすり寝ている2人を起こすのは可哀そうだったので、そのまま寝かせておくことにした。ただ、せめて少しでも気持ちよく眠ってもらうために、Aさんが持ってきた毛布を2人にかけた。

私たち2人は、肌寒さを紛らわすために、一晩中、馬鹿話をして過ごした。


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