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十日に一度、熱中症

暑くて
やっとたどり着いた天命庵

今日はお祭り
あしき払いと十二段下り
何とか踊っているうちに

あとから来たおばあさん
外は暑いと思いきや
いえいえ部屋の中の方が蒸しています

そのうちに後ろに座るおばあさん
異常な汗で意識朦朧

えっ、どうしたの
熱中症…

蒸している室内で
みんなが慌てて
やってくる

エアコン入れて
首回りには
アイスノンを当ててもらい
足元はバスタオルを巻く
冷たい水も
用意してある

わたしは彼女を団扇であおいでいる

ふたりがかりで
団扇で仰ぐ

大丈夫?大丈夫?

その間もお祭りは続く

今日はお祭りの最後に
送り火をしてくれる
みんなの御先祖様のために
般若心経、御焼香

わたしはその間も
団扇で仰ぎ続ける

自分は役に立っているのか
小さな役目をいただいて
その人の手を握り

あたたかい手

その時にふと
冷たくなった母の手を思い出す

悲しいけれど母はいない
魂はいつも一緒と言われても
肉体のない母の現実を突き付けられる

そこのことを誰にも言い出せなくて
あとから涙をこぼす

十日に一度の神様詣で
母のいない現実を
どうやって
堪えたらいいのか

みんな同じ気持ちを抱えている

口には出さねども

にがい思いを抱いている
どうやって生きて行けばいいのだろう


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