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恐竜の世界史 (スティーブ・ブルサッテ)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)

 ちょっと前にも恐竜関係の本としては「大人のための恐竜教室」を読んでいます。幼いころ “恐竜” に興味をもった人は多いと思いますが、私もその一人です。

 本書は「最新の恐竜研究の成果とそれを踏まえた恐竜たちの歴史」を概説したなかなか面白い本です。
 数多くの興味を惹いた箇所はあるのですが、その中からいくつか書き留めておきます。

 恐竜の世界のスーパースターと言えば、やはりT・レックスですが、彼らは「北米西部の支配者」だったようです。その他の地域はまた別の生態系があり、それらは同時に“絶滅”したのです。

(p240より引用) 白亜紀が幕を閉じようとしていた頃(北アメリカでT・レックスとトリケラトプスが激闘を繰り広げ、南半球でカルカロドントサウルス類が巨大な竜脚類を襲い、ヨーロッパの島々にさまざまな “小人”恐竜 が暮らしていた頃)、恐竜は無敵であるように思えた。ところが、例えば城のように、例えば帝国のように、例えば波乱の生涯を送った異才の貴族のように、進化が生み出した大いなる王朝もまた、倒れうる。最もありえない事態に見舞われた時に―。

 そして、ほとんどの恐竜が絶滅します。小惑星が衝突し、まさに天変地異が襲い掛かった恐竜最期の日の記述はとても衝撃的です。
 しかし、一部は絶滅を免れ、今にその命をつないでいます。それが「鳥類」です。

(p271より引用) 恐竜が進化して鳥類が誕生した。これまで見てきたように、それは徐々に起きたことで、獣脚類の一系統が数千万年かけて現生鳥類ならではの特徴と行動を一つずつ獲得していった。ある日突然、T・レックスがニワトリに変貌したわけではない。・・・進化のおかげで、小柄で、前肢が長くて、脳が大きくて、保温用の羽毛と求愛用の翼を備えた肉食恐竜が誕生したのなら、ほどなく、その動物は空中で羽ばたきはじめることになるはずだ。その瞬間、血で血を洗う世界を生き延びようと未熟な飛行能力を駆使して羽ばたく恐竜に自然選択が働きはじめ、その子孫を優れた飛行動物に変えてゆく。改良が加わるたびに、より上手に、より速く、より遠くまで飛べる子孫が現れ、ついに現代的な鳥類が出現する。
 この長きにわたる移行が最高潮に達すると、生命史に残る大変革が起きた。翼を備えた空飛ぶ小型恐竜についに進化したことで、大いなる新たな可能性が拓けたのだ。空飛ぶ小型恐竜、つまり最初期の鳥類が猛烈な勢いで多様化しはじめた。

 ご多聞に漏れず、私も幼いころは「恐竜図鑑」を眺めるのが大好きでした。しかし、そのころ見たイグアノドンは二足歩行、今知られている姿と全く異なっていました。ティラノサウルスの前肢も力強いものでした。

 恐竜の研究はここ数十年でも大きく進んでいます。本書はその最新の知見を教えてくれました。
 望むべくは、もう少し「図絵」が欲しかったですね。やはり恐竜は “ヴィジュアル系” ですから。



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