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岸朝子のお気に入り お酒はおいしゅうございます (岸 朝子)

 最近は普通の居酒屋さんに行っても、全国各地の地酒の銘柄が数多く取り揃えられています。

 私自身は、ここ数年お酒を飲むのは控えているのですが、飲んでいたころも自分の舌に全く自信がなく、いろいろな種類の銘柄を飲んでも味の違いが分かるわけではありません。
 こういうものは、文字で理解するものではないのでしょうが、とはいえ、やはりちょっとは違いが分からないと、せっかくの楽しみも半減してしまいますね。

 この本は、「料理記者歴50年」という肩書きと「おいしゅうございます」という決め台詞で有名な岸朝子さんが紹介するお酒と酒肴のカタログです。

 本書の冒頭、岸さんのお酒に対するポリシーが示されます。

(p6より引用) 時代によってお酒にも流行がありますが、私の信念は「酒はあくまでも料理とともに味わうものであって、酔うものではない」ということです。

 これは私もそのとおりだと思います。
 ただ、なかなかそういう機会には恵まれません。宴会メニューは、ほとんど「飲み放題パック」です。なかには「銘柄酒」を含んでいるものもあるようですが、まあ、そもそも「宴会」というシチュエーション自体、お酒と料理を楽しむものではありませんから・・・。

(p8より引用)
 「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり」
 浪漫的作風で旅と酒を好んだといわれる歌人、若山牧水の歌です。

 テレビCMの1シーンのようですね。
 今は新型コロナ禍で宴席自体控えられていますが、解禁になったとしても、こういう落ち着いた贅沢な時間に浸ってみたいものです。

 この本は、それぞれのお酒ごとに岸さんの短いコメントがついていて、そこには、そのお酒に合うその地方の酒肴も紹介されています。

 たとえば、四国は高知の「秀麗 司牡丹」ではこんな感じです。

(p35より引用) 青葉の5月、春カツオはおいしいお酒といただきたいですね。余分な脂がなく、キリッとした赤身のおいしさは格別です。カツオのたたきは、塩をまぶして、表面を一気に焼き上げます。切ったとき表面から2mm火を通す焼き加減が最高。

 “土佐料理には土佐の酒”ということですね。
 こういった旅の楽しみ方は憧れます。


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