見出し画像

本を読む本 (M・アドラー他)

読書の技術

 著者は、普通の読者を「積極的読者」に高める具体的方法を示しています。
 それは、読書を4つの段階に分け、初級読書・点検読書・分析読書・シントピカル読書とステップアップさせるものです。

 こういった読書技術を高めるにあたって、アドラー氏(著者)は、読者にひとつの単純な約束事を求めます。「読んでいる間、質問をし続け、また、自らも回答を考えつづけること」という約束です。

(p53より引用) どんな本を読む場合でも、読者がしなくてはならない質問は、次の四つである。
1.全体として何に関する本か。・・・
2.何がどのように詳しく述べられているか。・・・
3.その本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か。・・・
4.それにはどんな意義があるのか。・・・

 四つの質問を心得ているだけでなく、読みながら問いかけをすることを忘れてはならない。読みながら質問をする「習慣」は、意欲的な読者のしるしである。

 本書が薦める読書法のゴールは、同一主題について複数の本を読む「シントピカル読書」ですが、読書技術としての肝になるのは「分析読書」です。
 アドラー氏は分析読書のための「規則」を4つあげます。

第一の規則(p69より引用) 「読者は、いま読んでいるのがどんな種類の本かを知らねばならない。これを知るのは早いほどよい。できれば読みはじめる前に知る方がよい」
第二の規則(p88より引用) 「その本全体の統一を、二、三行か、せいぜい数行の文にあらわしてみること」
第三の規則(p89より引用) 「その本の主な部分を述べ、それらの部分がどのように順序よく統一性をもって配列されて全体を構成しているかを示すこと」
第四の規則(p105より引用) 「著者の問題としている点は何であるかを知る」

 だだ、これはまだ分析読書の「第一段階」です。
 このあと「著者の言葉の使い方を理解」し、「著者の伝えたいことを把握」し、「著書を正しく批評」することへと続いていきます。

本 vs 読者

 この本は読書技術を高め、積極的なすぐれた読者になるための具体的方法を説いています。
 もちろん、その方法は頭の中だけで理解しただけでは無意味です。実際の読書の中で活用・実践しなくてはなりませんし、そもそも、どんな本でも“読めばいい”ということではないようです。

(p247より引用) すぐれた読者になるためには、本にせよ、論文にせよ、無差別に読んでいたのではいけない。楽に読める本ばかり読んでいたのでは、読者としては成長しないだろう。自分の力以上の難解な本に取り組まねばならない。

 それでは、積極的読書に値する本とはどんな本でしょう?

(p250より引用) 西欧に限っても、これまでに出版された本の数は数百万冊に達する。だが、その大部分が、読書の技術を磨くのにふさわしい本とは言えない。誇張に聞こえるかもしれないが、実際、九十九パーセントまではそういう本だと言っても過言ではない。・・・
 だが、本当に読書法や人間の生きかたを教えてくれるような本もたしかにある。100冊に1冊、いや1万冊に1冊しかないかもしれないが、著者が精魂こめて書いたすぐれた本である。・・・

(これほど、世の中に「良書」が少ないのであれば、良い本を増やすための「本を書く本」が必要です・・・)

 また、こうも言っています。

(p251より引用) 読むに値する数千冊のうち、本当に分析読書に値する正真正銘の良書となると、100冊にも満たないだろう。・・・
 二流の本は、再読したとき、奇妙に色あせてみえるものである。それは、読者の方がいつの間にか成長し、本の背丈を追いこしてしまったのである。
 もっとすぐれた本の場合は、再会したとき、本もまた読者とともに成長したようにみえるものだ。

 優れた本というのは、本当に稀にしか出会えない、でも一度そういった本に出会えば、その後も何度も読み返し、そして、そのたびごとに読み手も成長し続けることができるのです。

 とはいえ、そういう本にめぐり合うためには、読み手の方にもそれなりの技量が必要です。最後まで読んでみないと分からないというのでは、あまりに非効率です。

(p248より引用) こういうわけで、単によく読む能力だけでなく、読書能力を向上させてくれるような本を見きわめる目を養うことが、とくに大事になってくる。

 まずは、本を手に取った際には、じっくり読むべき本か否かを見分けなくてはなりません。その方法として、著者が示した第二段階の読書技術「点検読書」が有益になるのです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?