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文系AI人材になる : 統計・プログラム知識は不要 (野口 竜司)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 日経新聞の記事で三井物産が社員必読書として推薦している本だと紹介されていたので手に取ってみました。

 構成は、「AIの基本」「AIの作り方」「AI用語」「AI事例」というようにオーソドックスに実務に直結した項目がカバーされていますから、(私自身は “もう手遅れ” の年代なのですが、)まだ現役でこれからという周りの方々にとっては参考になるところが多々あるでしょう。

 とはいえ、超初心者向けの内容なので、この中で興味を持ったところについては、別の情報で深掘りするとか、今後のトピックを意識的にフォローすることによって、継続的に理解を深めていく必要があると思います。とにかく、この手のトピックは日進月歩(秒進時歩?)ですから。

 さて、本書を読み通して一点、著者野口竜司さんのメッセージを材料に私のコメントを書き留めておきます。

 野口さんは最終項「文系AI人材が社会をリードする」で、こう記しています。

(p340より引用) 会社や社会では、さまざまな役割の人がいてはじめて上手くいくことがたくさんあります。AIの活用においても、同じことがいえるのだと思います。
 新しい技術分野においては、コア技術を磨くことや技術の中身の議論に偏ってしまうことがありますし、教育環境においてもその偏りがそのまま反映されることもあります。ここ最近、日本では先行して「AIを作る」専門家だけが増えていく傾向にあったのは仕方がないことかもしれません。
 しかし、これからの本格的なAI社会では、「AIを作る」専門家だけでなく、AIのことをよく理解し、的確に「AIを使う」人材も重要なポジションを担うことになります。

 この視点は至極真っ当ですし、とても大切な指摘です。

 本書では、あえてタイトルで「文系」と強調していますが、当然のことながら、今のご時世「文系」「理系」といった区分は全くナンセンスですね。(こういったキャッチーなワードを用いるのは、編集者の確信犯的プロモーション意識の表れでもあるのでしょうが)

 AIの活用は、人々の社会生活すべての面において進展・浸透していくことは間違いありません。現在の仕組み・やり方が “AIと共生” していくわけですから、それはすなわち社会のあらゆる営みやプロセス全体を “AIと人とで協働” することになります。

 ポイントは、AI化されたプロセスのみではなく、その前後のプロセスやそれを取り巻く業務・環境等を俯瞰的/包含的にとらえ、実際に使えるトータルな仕掛けとして動かし続けることです。
 そこに関わる人に「文系」「理系」の区分けはありません。



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