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最後の講義 完全版 福岡伸一 (福岡 伸一)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)

 NHKの「最後の講義」という番組での福岡伸一教授の講義模様を書籍として起こしたものです。

 ただ、最後の講義といっても、「最後の講義だとしたら何を話すか、何を伝えるか」という問いから構成された“仮想最終講義”という立て付けです。
 なので、「動的平衡」というコンセプト等、今まで出版された「生物と無生物のあいだ」をはじめとした数多くの著作のエッセンスに加えて、福岡さんが今抱いている最新の問題意識も紹介されています。

 その中で、ひとつ、私が気になったくだりを書き留めておきます。
 物理学者朝永振一郎氏が記した「滞独日記」の中の一節を福岡さんが敷衍して解説している部分です。

(p158より引用) 朝永振一郎が言っていたように、物理学や生物学という科学は、自然という混沌としたものを理解するために、いったんそれを単純化する、機械化する、モデル化することによってたわめて見ている、つまり、不自然なものに変えて見ているわけです。要素還元主義的な見方で、あるいは、時間を微分的に止めてパラパラ漫画みたいにして見る方法で、世界を解釈しようとしているのです。それは、ロゴス的な解釈、つまり、言葉によって自然を分節化していく解釈です。それをもう一度、本来の自然に戻さなければいけないと朝永は言っているわけです。

 生命を “動的平衡にある流れ” と定義する福岡さんの考えと軌を一にするものですね。



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