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画文集 安野光雅の「ファーブル紀行」 (安野 光雅)

 安野光雅氏とファーブルという取り合わせがちょっと気になったので手にとってみました。

 「昆虫記」で有名なファーブル(Jean-Henri Fabre 1823~1915)は南フランスの寒村サン・レオンに生まれました。プロバンス地方のセリニヤンに移り住み、困窮生活にも関わらず、独学で昆虫学の研究に専念します。終生におよぶこの地での観察が、あの「昆虫記」(全10巻1879~1910)に結実するのです。

 本書は、1988年、NHKで放送された「NHK特集『安野光雅 ファーブル昆虫記の旅』」に関連したものですが、安野光雅氏は、その数年前からフランスでファーブル昆虫記ゆかりの土地を訪ねスケッチを続けていました。

 私自身、絵心があるわけではなく、また、安野氏の絵が特に好きということでもないのですが、この本に載っている絵はどれもしっくりと馴染みます。南フランスの小さな町の家並みや農村風景等は、安野氏独特の淡い色調の水彩画の画題としてはぴったりのようです。

 本書は、タイトルに「画文集」とあります。
 その大半は、安野氏の画集の体裁ですが、ところどころにエッセイ風の文章が挿入されています。ファーブルの半生や人となりの紹介、訪れた町や村の描写など、軽いタッチで語られています。
 その中の一節、「ファーブル昆虫記の価値」についてのくだりです。

「ファーブル昆虫記」は昆虫の生態の記録でもあるが、その学問にたいする独学という姿勢が全体を貫いているということが、ひそかな価値なのではないかと思っている。



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