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子どもたちを責めないで2022

1983年、僕が高校1年生になった秋に出てきた楽曲。

曲名:子供達を責めないで
アーティスト:伊武雅刀
作詞:日本語詞:秋元康
作曲:Barnum・Reeve

約40年前の歌だ。今、この歌詞を聴くと人はどう感じるのだろう。

この問いがひさしぶりに聴いてみて思った。

私は子供が嫌いです。
子供は幼稚で 礼儀知らずで 気分屋で
前向きな姿勢と 無いものねだり
心変わりと 出来心で生きている
甘やかすとつけあがり
放ったらかすと悪のりする
オジンだ 入れ歯だ カツラだと
はっきり口に出して人をはやしたてる無神経さ
私ははっきりいって“絶壁”です

努力のそぶりも見せない 忍耐のかけらもない
人生の深みも 渋みも
何にも持っていない
そのくせ 下から見上げるようなあの態度

火事の時は足でまとい 離婚の時は悩みの種
いつも一家の問題児
そんな御荷物みたいな そんな宅急便みたいな
そんな子供達が嫌いだ

私は思うのです
この世の中から子供がひとりも
いなくなってくれたらと
大人だけの世の中ならどんなによいことでしょう

私は子供に生まれないでよかったと
胸をなで下ろしています。

私は子供が嫌いだ
ウン!
子供が世の中のために何かしてくれたことが
あるでしょうか
いいえ 子供は常に私達 おとなの足を
ひっぱるだけです。
身勝ってで “足が臭い”
ハンバーグ エビフライ カニしゅうまい
コーラ 赤いウインナー カレーライス
スパゲティナポリタン
好きなものしか食べたがらない
嫌いな物にはフタをする
泣けばすむと思っている所がズルイ
何でも食う子供も嫌いだ。
スクスクと背ばかり高くなり
定職もなくブラブラしやがって
逃げ足が速く いつも強いものにつく
あの世間体を気にする目がいやだ
あの計算高い物欲しそうな目がいやだ
目が不愉快だ。
何が天真爛漫だ 何が無邪気だ
何が星目がちな つぶらな瞳だ

そんな子供のために 私達おとなは
何にもする必要はありませんよ
第一私達おとながそうやったところで
ひとりでもお礼を言う子供がいますか
これだけ子供がいながら ひとりとして
感謝する子供なんていないでしょう

だったらいいじゃないですか
それならそれで けっこうだ ありがとう ネ
私達おとなだけで せつな的に生きましょう ネ

子供はきらいだ 子供は大嫌いだ
離せ 俺はおとなだぞ
誰が何といおうと私は子供が嫌いだ
私は本当に子供が嫌いだ

https://music.branchwith.com/lyrics/6cQGUqx13SftwPFb0qpW

もう何年か前に、都内の人たちが近所に保育園ができると静かに過ごせないから反対だと言われて、保育園がつくれなかったという話を聞いたことがある。

これを知った時、衝撃的だった、本気で自分たちの静かな暮らしのためには子どものための場所や子育てをしやすい環境を許さないという判断をする大人たちが一定数いるということに。

なぜ衝撃的かというと、子どもがいない社会は未来がないからだ。子育てしやすい社会づくりは未来づくりだからだ。自分たちがこうして生きているのも子供時代に大切にしてくれた人たちがいたからだ。

自分の死んだ後のことは関係ないという考えなのだろうか。もしかしてこの歌詞のようなことを本気で思っている人たちが今、増えていっているのか?

この歌は、子どもの当時の現実を批判しているように見せて、『私は子供に生まれないでよかったと胸をなで下ろしています』というセリフにあるようにそれ自体がナンセンスであるという前提があったように思う。

その上で『私達おとなだけで せつな的に生きましょう ネ』と。つまり、そのような大人の生き方を皮肉っている。

にもかかわらず、自分の今のことだけを考えて、未来への投資については考えない大人たちがいるかのような感じがしたのだ。まさに皮肉ではなく本気の『私達おとなだけで せつな的に生きましょう ネ』である。

この歌については、こちら↓のブログにいろいろ書いてあるのだが、

原曲はサミー・デイヴィス Jr. の「Don't Blame the Children」っていう、1967年の曲。

https://reminder.top/709610075/

なんと55年前に原曲が存在していたと書いてある!

この歌詞はこちら↓

You know we read in the papers
新聞を読み
And we hear on the air
ラジオを聞けば、
Of killing and stealing
殺人、盗み、
And crime everywhere
ありとあらゆるところに犯罪だらけだ

And we sigh and we say
溜息ついて言っちゃうよね。
As we notice the trend
嫌な世の中だよ
This young generation
若いやつらの時代は
Where will it end
いつ終るんだろうってね。

But can we be sure
しかし、気がつかなくっちゃね。
That it's their fault alone
それは、彼らの過ちではあるけどさ、
I mean, that maybe a
多分、それはさ、
Part of it isn't our own
部分的な責任は、俺たち自身にもあるんじゃないのかな?

Are we less guilty
俺たちはそれほど悪くないけど、
Who place in their way
彼等の中にあってさ、
Too many things
あまりに多くのことがさ、
That lead them astray
彼等の道を誤らせている、と

Like too much money to spend
例えば、浪費できる金が多すぎるとか、
And too much idle time
暇な時間がありすぎるとか、
Too many movies The kind of passion and crime
それも情欲と犯罪の類の映画が多すぎるとか、

Too many books, man
多くの本がありすぎて、
That are not even fit to be read
読むのに相応わしくなくて、
Too much evil in what they hear said
彼等の中ではよくないものが多すぎるとか。

And too many children
多くの子供は
Encouraged to roam
うろつきまわるのが悪いとは思わないさ
By too many parents
だって、多くの大人は
Who won't even stay at home
家にいやしないんだもの

(Don't blame it on the children)
(子供達を、そのことで責めないでやってよ)

Well, man, kids don't make the movies
でもさ、子供は映画を作らないよね。
And they don't write the books
本も書かないし、
And they don't go out
夜遊びだってしない
And paint gay pictures Of gangsters and crooks
ヤクザや詐欺師を美化した映画もつくらないし


They don't make the liquor
子どもたちは酒を作っている訳でもないし
And they don't run the bars
子どもたちはバーを経営するわけでもない
And they don't make the laws
子どもたちは法律を作るわけでもなし
And they don't buy the cars
子どもたちは車を買うこともしない

They don't peddle junk that
子どもたちは薬物を売るわけではない
Well, that addles the brain
そして、それで脳を腐らせることもない
That's all done by older folks, man
全部、大人のやっていることじゃないか、なあ兄弟
Greedy for gain
がつがつした金への執着でさ

Delinquent teenagers, oh, man
非行少年ってのはさ、
How quick we do condemn
どんなに早くとがめたところで
The sins of a nation
国民全体の罪ををね、
And then go and blame it on them
そのことで責めてたとしてもだよ

But the laws that are blameless
とはいえ、法律には文句を言えないし
The Savior makes known
救世主(キリスト)に知らせても、
Now you tell me who is there
あんたは俺に言うのか、そこに誰がいて
Among us to cast the first stone
俺達のなかから、誰かが最初の石を投げる、とさ

For in so many cases
あまりにも多くのことがあるけど、
It's sad but it's true
悲しいけど、それが真実だ。
That the title Delinquent
「非行」の称号は、
Fits older folks too
俺達大人にこそピッタシなんだよ

(Don't blame it on the children)
(子供達を、そのことで責めないでやってよ)
(Don't blame it on the children)
(子供達を、そのことで責めないでやってよ)
(Don't blame it on the children)
(子供達を、そのことで責めないでやってよ)

https://taguchikei.hatenablog.com/entry/20131125

こちらの原曲の歌詞も、こうした社会をつくった大人たちの責任を見つめ直す内容であり、先に紹介したブログでは、秋元康の歌詞はこの原曲の真逆の歌であるという解釈があるが、僕はどちらも同じように大人たちの現在を歌っているように思える。

55年後に生きる僕らが将来世代のためにできることを考えないとしたら、それはこの歌でナンセンスだと皮肉を込めて訴えていたことをまったく忘れた社会をつくっていくことになるだろう。

そういった潮流もあるのかもしれない。

僕らは、子どもたちのことを本当に大切にできるかどうか、今一度考えていく必要がある。

自分より若い人たちが本当に生きやすい社会づくりをしてきたのか。

自分たちより若い人たちのために何を差し出せるか考える大人になれたのか。

それこそが持続可能な社会の根源となる考えなのだと思っている。

伊武雅刀のこの歌を今一度聴いてみてほしい。そして本当に笑えたらいいな。この皮肉やナンセンスがわかるなら、大丈夫だ。

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