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読書感想文              血液型で読み解く芥川の『蜜柑』


 芥川はA型です。芥川が活躍した時代、『蜜柑』の時代は、大正時代、第一次世界大戦が終わる頃です。大正時代は、大正デモクラシーといわれるぐらい自由が発展した時代です。しかし、その自由は、芥川にとっては不完全な自由で、自由というより、みんなが自分勝手なことばかり言い合う雑多で無秩序な世界に感じられました。それは、芥川が電車の中で読む新聞記事の描写に表れています。
 そして、例の少女です。3等切符で2等客車に乗り込んでくるし、断わりもせず窓をあけて、煙を車内に吹き込ませてしまうし、やりたい放題で、芥川の不快感も絶頂に達します。この少女はきっとO型なのでしょう。
 しかし、次の瞬間、少女が見送りに来ていた弟たちに蜜柑を窓から投げ与えるのを見て、ハッとさせられるのです。感動させられたのです。目の前の、今まで馬鹿にして毛嫌いしていた少女に。それはきっとA型の芥川には起こすことのできない感動だったのでしょう。O型ならではの楽天的ともいえる生命力、そしてそこから発散される包容力…。それに圧倒されて、芥川はあっさりと自分の負けを認めたのです。「O型も捨てたもんじゃないな」と。


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